東北大学は4月6日、グラフェンを二層重ねた物質(二層グラフェン)の間にカルシウム原子を挿入(サンドウィッチ状)した二層グラフェン化合物について、それを形成する下地基板の特性を利用して性質を改変することに成功し、電荷密度波が生じていることを明らかにしたと発表した。
同成果は、同大 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の清水亮太 助教、菅原克明 助教、高橋隆 教授、一杉太郎 准教授らによるもの。詳細は米国物理学会誌「Physical Review Letters」オンライン版で公開された。
グラフェンは、次世代エレクトロニクス素子としての応用に向けて、エネルギーギャップや超伝導などのさまざまな性質を付与することが求められ、研究が進められている。中でも二層グラフェンに、金属原子を挿入して新たな特性を付与する試みが進められており、中でもカルシウムを挿入した二層グラフェン化合物では、グラフェンへの電子の注入により超伝導や金属が絶縁体に変化する現象など、さまざまな物性発現が期待されており、カルシウム原子を挿入したことで、どのように物性が変化するのかを突き止めることが求められていた。
今回、研究グル―プでは、二層グラフェンの層間にリチウムとカルシウムを挿入した2種類の試料を作製。詳しく分析を行った結果、カルシウム側では、各カルシウム原子のならびに加えてその2.5倍の周期で電子密度の濃淡が現れることが見いだされたという。また、電子状態を評価した結果、エネルギーギャップが形成されていることも確認されたという。
この結果について研究グループは、その形成機構より、二層グラフェンにおいて超伝導や電荷密度波など多様な特性が競合していることが明らかになり、電子状態の制御についての知見が得られたと説明しており、今後は、グラフェン層間に放出される電子数の制御や結晶周期性が異なる基板を使用することで、グラフェンの伝導性の制御や超伝導などの多様な特性を付与・制御することが期待できるようになるとコメントしている。