2000年代に日本の研究論文数の伸びが鈍った原因は、代表的な競争的資金である科学研究費補助金(科研費)を得られない研究に関する論文が減少したためであることが、科学技術・学術政策研究所の調査で裏付けられた。
同研究所が1日公表した調査資料「論文データベース(Web of Science)と科学研究費助成事業データベース(KAKEN)の連結によるわが国の論文産出構造の分析」は、2006-2008年に発表された日本の論文数の約47%、トップ10%補正論文と呼ばれる注目論文数の約62%に科研費が関与していることを明らかにしている。科研費は日本の論文産出の量と質に確実に寄与していることが裏付けられた形だが、安心できるわけではない。科研費が関与する論文数とトップ10%補正論文数の世界シェアは、2000 年代前半をピークに低下傾向にあることも、同時に明らかになったからだ。
2001-2003年と2006-2008年の全論文数を比べると、4.4%、2706件減少している。科研費を得ていない研究の論文数が減ったことが大きく、科研費を得ている研究論文の増加では補完できなかった、ということだ。
科学技術・学術政策研究所は「本調査から見えてきたこと」の中で、「科研費による論文数は増加傾向にあるが、日本全体の世界での存在感を維持させるほどの伸びを生み出していない。科研費とそれが生み出す成果を一層、充実させることが必要」としている。
科研費を得ていない研究の論文数が減っていることについては「論文産出の減少を食い止める有効な手立てを考える必要がある」としか記していない。ただし、本文中には次のような記述もある。
「科研費を得ていない論文数が多くの国立大学で減少しているが、多くの私立大学では減少していないことから、運営費交付金と密接な関係があると示唆される」
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