博報堂は4月1日、東京都港区赤坂の本社にて、2015年度入社式を実施した。式には111名の新卒採用者が参加し、同社代表取締役社長となる戸田裕一氏が歓迎と激励の言葉を贈った。

本日、私たちは 111名の無限の可能性を持った皆さんを、新しい仲間として迎えることになりました。会社を代表して、心より歓迎致します。

若さと活力に満ち溢れた若者が博報堂の仲間となることに対して、強い期待を抱いております。自信をもって、素直に真っ直ぐに成長していってほしいと思います。

今年、博報堂は創業 120周年を迎えます。今から120年前、日本が日清戦争を終え、近代化の途上にあった頃のことです。当時、新聞や雑誌はニューメディアでした。そして、広告はニュービジネスでした。

1895年10月6日、創業者である瀬木博尚は博報堂という看板を掲げ、教育雑誌の広告取次を始めました。創業者は、これからの日本のために「出版を通じて、青少年の教育に貢献する」という志を抱き、後には数多くの教育にかかわる雑誌や書籍を発行。1939年に亡くなるまで、出版広告を主たる事業として、博報堂を成長させました。

創業から半世紀、1950年代にはラジオやテレビの民間放送が始まり、広告業は急速な発展を遂げます。日本経済の高度成長期を経た1970年代後半、日本人の価値観・生活意識は変化し、欲求が「モノの満足」から「こころの満足」へ移りつつありました。

博報堂は、人を単なる消費の対象である消費者として捉えるだけではなく、自らの生活を主体的に創造する「生活者」と捉えました。そして、「生活者」をより深く知ることを目的として、1981年に博報堂生活総合研究所を設立しました。博報堂には「生活者から発想する=生活者発想」と「パートナー主義」というフィロソフィーがありますが、「生活者発想」は、この博報堂生活総研の設立から具現化していきます。

博報堂は、生活者を一番良く知っている広告会社になろう、そこから発想して最高のクリエイティビティを発揮する広告会社になろう、と、努力を重ねてきました。生活者のことを一番良く知って、そこから発想することで、生活者の幸せにつながる新しい価値を創造していく。生活者視点に立つからこそ、クライアントの一番のパートナーになれるのです。

クライアントやメディア、そして生活者のパートナーとして、共通の課題を持ち、一緒に解決していくこと、共に成長し、社会を豊かにしていく。この考え方に基づき、博報堂博報堂DYメディアパートナーズは昨年、合同ビジョンとして、「未来を発明する会社へ。Inventing the future with sei-katsu-sha」を発表しました。これは、私たちが「生活者とともに未来をつくる」存在になっていたいという、強い意思表示です。


博報堂 2016年度新卒採用サイト イメージ

社会は今、「生活者主導社会」へと大きく舵を切っています。生活者は、もはや受動的な存在ではありません。デジタルネットワークでつながった「発信する主体」「行動する主体」です。

ソーシャルメディアの台頭を背景に、生活者と企業が共に価値をつくる時代に入りました。30年にわたって生活者発想を培ってきた私たちが、いよいよ「生活者と共に未来をつくる」存在になる時を迎えようとしているのです。

特にこれからは、生活者を「知る」、生活者から「発想する」、という「発見」の部分から、生活者の渦の中に入って「働きかける」、その結果、社会を善い方向に「変える」という「発明」の部分が重要になっていくでしょう。

もちろん、「発見」の部分がなければ「発明」はありません。これから、「生活者発想」を、「発見」を超えて「発明」の方法へ、「パートナー主義」を「発明」の「しくみ」へと進化させていきたいと思っています。

本日、皆さんを新しい仲間として迎えることができました。今日から皆さんは、仕事を通して社会と関わりを持つことになります。博報堂の仕事は、情報の起点をつくりだし、生活者、企業、社会に「未来を切り拓く力」を湧きあがらせる仕事です。「自分はどう考えるのか」「自分自身は何をしたいのか」という強い想いを持ち、前向きに発言し、行動に移していく必要があります。

博報堂には、自由に仕事ができる自立の風土があります。仕事を「自分ごと」として、自由闊達に臆することなく、持てる力をフルに出し切っていただきたいと思います。それが、「未来を発明する」ことに繋がるのだと思います。

これから博報堂で仕事を始める皆さんに、2つの言葉を贈りたいと思います。

まず1つ目は、「粒ぞろい、より、粒違い」という言葉です。「粒ぞろい、より、粒違い」という言葉は、博報堂の人材についての考え方を表している言葉です。博報堂では、個の力、すなわち、自分の頭で考える力を尊重しています。一人ひとりが、オリジナリティを持って、いきいきと輝いている。粒立っている。そうした異なった個性が、望まれています。

博報堂の中核能力は、クリエイティビティです。異なった価値観、異質な才能、多様な文化のぶつかり合いから、新しいアイディアが生まれます。教科書に書かれていることは、すべて過去のことに過ぎません。「未来を発明する」ためには、今まで以上に「粒違い」の多様な個性が必要です。皆さんには、若さとエネルギーに満ち溢れた「粒違い」の個性として、刺激しあって共に成長していただきたい、と思います。

2つ目は、「チーム」という言葉です。「チーム」という言葉は、博報堂の働き方についての考え方を表している言葉です。

「グループ」と「チーム」は違います。「グループ」は単なる人の集まりですが、「チーム」はゴールを目指すパッションで結ばれた集団です。「チーム」とは「異なった個性が、共通の目的を実現するために、熱意をもって助け合う」運動体のことです。助け合うからリスクが取れます。リスクが取れるから、イノベーションが起こせます。失敗を怖れずリスクを引き受ける精神は「チーム」から生まれます。

アイディアに上下関係はありません。年齢も、性別も、職種も関係ありません。博報堂には、良いアイディアは、誰が出そうが良いアイディアである、と認め合い助け合う「チーム」の文化があります。「粒違い」の能力を持つ「個」の力と、お互いを高めあう「チームの力」が、高度なクリエイティビティを生み、「未来を発明する」原動力になる、と考えています。

「チーム」というコンセプト、これは博報堂という会社の中の「チーム」という風に狭く捉えてはいけません。博報堂DYメディアパートナーズや、博報堂プロダクツなど、我々には、それぞれ専門的な能力を兼ね備えた多くの仲間がいます。デジタル、プロモーション、PR、コンサル、リサーチなど、先進的な取り組みをしている仲間も増えています。国内のみならず、海外にも多くの仲間がいます。

「生活者」もまたチームの仲間です。2012 年には、中国に博報堂生活綜研(上海)を、昨年はタイに博報堂生活総合研究所アセアンを設立しましたが、こうしたアジアの「生活者」も仲間にしながら、「チーム」をつくっていこうと考えています。皆さんも、ひとまわり大きな 「チーム」の主体となって、個性溢れる仲間たちと、大きな成果をあげていってほしいと思っています。

会社としても、皆さんの成長を促す機会をどんどん作っていきたいと思っています。博報堂は、人が資産の会社です。一人ひとりの社員が生み出す価値が、博報堂の価値となります。私たちも全力を尽くして博報堂の舵取りを行ってまいりますので、皆さんも博報堂という船団のフレッシュなクルーとして、共に「未来を発明する会社へ」向かって、博報堂の未来を、力強く切り拓いていきましょう。

120 周年という節目の年に入社される皆さんのご活躍を大いに期待しています。以上をもちまして、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。