NTTコミュニケーションズと大林組は、IoTの取り組みの一つとしてクラウドと機能素材"hitoe"を用いた衣服を活用した、作業員向け安全管理システムの有用性を実証すべく、2015年4月から本格的な実験を開始すると発表した。
"hitoe"を活用したウエアラブルセンサ(写真は試作品で、実証実験で実際に利用するウェアと異なる場合がある) |
"hitoe"はNTTと東レが開発した、着衣するだけで心拍数や心電位を取得できる機能繊維素材。
この安全管理システムにより、気温の上昇に伴う作業員の熱ストレス(外部の気温が身体に負荷をかけていること)を可視化することで、作業員本人や管理者などが体調管理や事故防止を目的とした対策や判断ができるようにする。
建設現場においては、屋外作業が続く夏の作業環境は大変厳しく、また作業員の高齢化も進んでいるため、事故防止の観点から作業員の体調を管理し建設現場の安全を確保する取り組みが必須だという。
そこで、建設現場のワークスタイル変革を推進する大林組は、クラウドベースの安全管理システムを開発したNTT Comと共同で、上記課題を解決するために、実際の建設現場での作業員の心拍数などのバイタルデータのリアルタイム取得とモニタリングの有用性について実証実験を行うことにしたという。
実証実験では、すべての作業員の体調をリアルタイムに把握・分析し、事故を防止するには、[1]作業中のバイタルデータを長時間継続してモニタリングする、[2]複数の作業員を同時にモニタリングする、[3]バイタルデータを解析し、その結果に応じリアルタイムに通知する、という3つの技術要件が必要で、NTT Comと大林組は、2015年2月に技術要件[1]についての実証実験を行った。実験では機能素材"hitoe"を使い、作業中の作業員の心拍数などのバイタルデータを、試験的に実際の労働時間である8時間以上にわたり継続して取得・モニタリングを実施した結果、長時間のバイタルデータのモニタリングに成功したという。
技術要件[2]、[3]の確認については、2015年4月から開始する実証実験で確認する。技術要件[2]、[3]の確認には、作業者の体調をモニタリングするウェアラブルセンサとバイタルデータを分析するシステムが必要で、ウェアラブルセンサには、作業中のバイタルデータの長時間モニタリングを実現した機能素材"hitoe"を活用。システムには、NTT Comが独自に開発したクラウドベースのヒューマンセンシングシステムの一つである安全管理システムを利用する。このシステムでは、熱ストレス推定、疲労推定、姿勢推定、リラックス度推定、リフレッシュ度推定など様々な分析・通知が実現可能だという。
本実証実験において、大林組は、これまでの安全管理手法とNTT Comが開発した安全管理システムとの検証を行い、より安全で合理的かつ経済的な管理体制作りに向け、建設現場用のカスタマイズ項目の抽出や、耐久性、操作性などの確認を、NTT Comは上記クラウドベースの安全管理システムの実現において重要となる、外部からの攻撃や侵入を防ぐセキュアな通信環境や各推定技術の精度向上などに関する検証、及び、実際の作業環境における操作性、使いやすさの確認を行うという。