日本には世界的に有名な企業がたくさんあります。そしてその多くの企業は国内展開を念頭にしてきたため、規模の拡大やグローバル展開に力を入れるというタイミングで企業名すら変える場合もあります。松下電器がPanasonicに変更・世界ブランドに統一されたのは記憶に新しいところではないでしょうか。
企業の理念やイメージを表し、こうした未来の方向性などもビジュアルで表す役目を担っているのがロゴデザインです。そんな日本企業のロゴデザインを外国の方はどう見ているのでしょうか。今回は、日本在住の外国人20名に「ロゴデザインのかっこいい日本企業は?」と質問してみました。
■トヨタ(アルゼンチン/30代前半/男性)
■トヨタ(ブラジル/20代後半/男性)
■トヨタ(オーストラリア/40代前半/男性)
■トヨタ・Lexusです。(ベトナム/30代前半/女性)
■トヨタ・コムス(タイ/30代後半/女性)
■ホンダ(台湾/40代前半/男性)
今回は回答の幅が広すぎるため、ひとまず企業の分野で分けてみました。一番に自動車メーカーが上がるのが、世界における日本のイメージを表していて興味深いですね。
現在のトヨタマーク+ロゴタイプは、1989年に制作されました。赤は1936年に制定された初代トヨタマークを踏襲、エンブレム用に開発されたマークは、CIデザイナーの上原昌氏が日本デザインセンター所属時代にデザインしたものです。併用しているレクサスのロゴも構成は同じですが、色が黒。より性能の高さにラグジュアリーさやシックさ、ファッショナブルな印象を強めているのがわかります。一方のホンダですが、現在のロゴはブランドスローガン設定やVI規定の刷新を行った2000年から仕様。コーポレートカラーの「ホンダレッド」(PANTONE特色PANTONE186C、DIC特色F101)もこの時に定められました。赤が与える印象は、若々しく活動的かつパワフル。まさに自動車を想起させる色ですね。ちなみにゲームメーカーの任天堂も、かつて赤をロゴに採用していましたね。
■TOTO(ドイツ/40代前半/女性)
■TOTO(中国/20代後半/女性)
「ウォシュレット」で全世界に衝撃を与え、魔法とまで言わしめたTOTOにも2票。建築・デザイン系ギャラリー間の運営やTOTO出版からのデザイン関連書籍の発行など、デザインの普及活動にも積極的な企業です。1917年に東洋陶器株式会社から出発。1961年までのロゴはイラストでしたが、1962年にイメージ強化と小さい製品にも記載できる「東洋陶器(Toyotoki)」の社名のみに変更しています。今のロゴは1969年の商標変更時に登場し、自動車や電車から見る看板やネオンにも読みやすいようにデザインされました。ロゴカラーは瑠璃色で、1960年代まで製造していた食器で特色とされていた色つけ技術から来ています。こうしたフォントの比率などを指示した基本資料は、小倉のTOTO資料館でも見ることができるそうです。
TOTOは陶器色つけ技術を元にした色設定ですが、INAXなどのトイレメーカーなども水色系のロゴ。ジャンルは違いますが、IBMなどのパソコンメーカー系、Facebookなどの情報を扱うWebサービス系の企業などが採用している色でもあり、清潔さや落ち着きはもちろんのこと、製品に対する信頼性の高さを印象づける色でもあります。
■LINE(アメリカ/20代後半/男性)
■特定の企業は思いつかないが、IT関連の企業の多くはかっこいい。(スウェーデン/40代後半/女性)
近年目につくのがLINEのようにグリーン系を利用した企業ロゴ。ロゴカラーといえばインパクトの赤、信頼性の青に二分されるとも言われてきましたが、どうやらその状況も変わってきているようです。
LINEは韓国のIT企業・NAVERから分離したため、系統として近い色を踏襲していると予想できます。またNAVER本国サイトでは親しみやすさと信頼性を印象づけるため、CIにグリーンを採用したという記載があるため意図も近いと考えても遠くはなさそう。とはいえNAVER GREENはPANTONE 361C、CMYK70/0/100/0、LINEはPANTONE 802C、CMYK63/0/84/0と若干の違いがあり、より彩度が高く若々しい印象です。
日本のIT企業ではGREEやドワンゴなどの青系(海外ではTwitterやFacebook)、楽天などの赤系(PintersestやYouTube)、サイバーエージェントの緑系(NAVERなど)、Sumallyやクックパッドなどのオレンジ~黄系(Etsyなど)とさまざまですが、企業が目指す方向性やサービスが近いものはロゴの色も近くなることが多いようです。
■三菱(スペイン/30代後半/男性)
■日立(ペルー/30代前半/男性)
■ニコン(イスラエル/30代後半/女性)
■JAL(フィリピン/40代前半/女性)
■クボタ(チュニジア/40代後半/男性)
■SONY(ロシア/20代前半/女性)
■キリンビール(トルコ/30代前半/女性)
■サークルK(イギリス/20代前半/女性)
このほか、音楽機器メーカーから白物家電、カメラ、航空会社、食品、コンビニエンスストアと非常に幅広い企業が回答にあがりました。
白・シルバー系のSONY、黒+赤の三菱や日立、JAL、KIRIN、サークルK、黒+黄のニコン、水色のクボタなど、色で分類するとなんとなくその企業にある印象とつながる気がするのが面白いところです。
中でも黒+赤、黒+黄など2色使いのロゴには歴史の長い企業も多く、黒で製品の信頼性や伝統を、アクセントカラーで革新性やアクティブさを伝えるなど、意味を強化しているのがポイントです。例えば、Nikonのサイトでは「すでに信頼を得ているデザイン要素を維持し、新たなニコンの表現要素を付加する」としてロゴ書体とイエローを踏襲し、可能性をエレメントで追加しています。また黄で広がりと情熱を、黒で信頼性と高品質を表しているという記載もあります。
■文字列になっている企業はかっこいいと思います。(マレーシア/30代前半/男性)
企業ステートメントを加えたデザインのことでしょうか。世界的に有名なものとしてはAppleの「Think different」ですが、国内でもたくさん採用されています。前述のSONYには「make.believe」(筆者的には以前の「It's a SONY」の印象が強いのですが…)、三菱なら「Changes for the Better」など。日本国内向けとしてキリンの「おいしさを笑顔に」のように日本語のものもあります。TOTOのように一目でわかることがロゴの基本ではありますが、新聞や映像など媒体によっては企業理念を伝える効果的な要素となっています。 その企業の理念やイメージをグラフィカルに表すロゴ。要素は企業名と色のみ(場合によってはアイコンやマークも)ですが、デザイナーが手がける仕事としては最も難しいという人も多い分野です。シンプルながらも、それだけの重みが詰まったデザインだということなのでしょう。
今回は見た面にもわかりやすい色を中心に取り上げてみましたが、デザイン要素ひとつひとつに確固たる意味が与えられています。興味がある人はフォントや細部などの理由もぜひ調べてみてくださいね。