博報堂アイ・スタジオは2月26日、昨年末から実施していた「チャリティー年賀状 学生デザインコンテスト 2015」の受賞者を対象に表彰式を行った。
この「チャリティー年賀状」は、全国の学生が作った年賀状デザインを商品化し、東北の被災校の児童を支援することを目的に博報堂アイ・スタジオが、同社のCSR活動として一般社団法人ウェブベルマーク協会の協力を得て実施したもの。2015年度の募集作品テーマは「メッセージや写真で近況を伝えられ、受取った方を元気にする年賀状のデザイン」。30校461作品(前年度の224%増)の応募作の中から106点を商品化し、サイト上で販売した。はがきへの印刷は1枚あたり78円、基本料金などはかからない。
また、1枚利用するごとに10円をウェブベルマークへ支援金として寄附。岩手、宮城、福島の震災被害を受けた小中学校の設備、備品、教材の購入に充てられる。今回の売上枚数は11万642枚(前年度の172%増)。110万6,420円が一般財団法人ウェブベルマーク協会へ寄付された。
博報堂アイ・スタジオ社長、平林誠一氏は「本年度は枚数、募金金額、デザインの質ともに大きな成果が出たと思う。年賀状は人と人との思いをつながるツール。日本が元気を取り戻し、復興するまで活動を継続しつづけることが大切だ。来年度以降も地道ではあるが被災地の、そして子供たちの生の情報も合わせて発信し続けていきたい」とコメント。続けて、「近年はPCだけではなく、スマホを使った年賀コミュニケーションも大きな広がりになっている。そんななかで若いデザイナー達が、年賀状という古来からのツールをさまざまアプローチから使用することにより、デザインの力で被災地との絆を深めていけるというのは大変意義のあることだと思う。この受賞経験をこの後の活躍に大いに役立ててほしい」と語った。
受賞作品紹介
同コンテストにおいて、「大賞」を獲得したのは、松江総合ビジネスカレッジの向井ちひろさん。総販売枚数は2万4,266枚。雲を羊になぞらえて作った作品となっている。向井さんは「今回、大賞に選んでいただきとても嬉しい。震災は自分が高校生の時で、絆の大切さについて考えさせられた。こういう形で役に立てて本当によかった」とコメントした。
続く、「準大賞」には山形デザイン専門学校の前田夢花さんが選ばれた。二匹の羊が正面で正座をしている作品で、総販売枚数1万524枚だった。前田さんは「素晴らしい賞をいただき感謝している。たくさんの人に自分のデザインが認められ、それが義援金となって東北を支援できるのは嬉しい」と緊張した面持ちで挨拶した。
ほか、「日本郵便賞」は穴吹デザインカレッジ 坂元麻美さん、「ゲッティ イメージズ賞」には麻生情報ビジネス専門学校北九州校 末綱麻衣子さん、「CG-ARTS賞」は東京工芸大学 本田葵さんが、それぞれ受賞した。
「チャリティー年賀状」に込められた想い
東日本大震災から5年目を迎えたが、震災で校舎に被害を受けた小中学校のうち、約7割がいまだに元の校舎に戻れていないのが東北の現状だ。プレハブ校舎や廃校となった学舎、企業からスペースを間借りして授業を行っているところも依然として多く、復興には長い時間が必要な上、被災校における子どもたちを取り巻く教育環境は復旧にはほど遠い状況ともいえる。
現状を伝える情報が日に日に少なくなっている今、「チャリティー年賀状」には記憶を風化させず、一日でも早い復興を願い、被災地の小中学校の現状を伝えていきたいという想いが込められている。
ネットショッピングで支援金を寄附できるウェブベルマークを運営する一般社団法人ウェブベルマーク協会の今宿裕昭氏は、「ベルマークは学校で集めるものなので、ベルマークを通じて、すべての学校の現状を把握している。昨年は震災で流されてしまったボールやマット、運動着、楽器、ストーブなどを支援でき、これも皆さんのご支援のおかげだ。災害支援というのは「緊急期(72時間)」、「復旧期(6カ月)」そして「復興期(1~20年)」にわたり行っていくことが大切で、今は「復興期」にあたる。復興というのは「元よりも良くしていこう」という支援であるため、単発ではなく長く継続的な活動が必要だ。そのためウェブベルマークのWebサイトでは、クリックするだけで気軽に3円の支援ができる「1クリック募金」も始めている」と説明する。
「支援」と言い切ってしまうと何やら大変なことのように感じるかもしれないが、「チャリティー年賀状」やウェブベルマークなど、このような活動をきっかけに自分が被災地のためにできることを、今こそ考えてみてほしい。
撮影:伊藤圭