富士通研究所は3月6日、顔が判別できない低解像度映像から人の動きを高精度で検出し、人の流れを認識する技術の開発を発表した。2015年度中の実用化を目指す。同社によると、同様の技術の開発は業界初とのこと。

近年、施設内や街中での人の移動経路の情報を使い、店舗の配置や店舗内の品ぞろえ、店員の配置などを最適化し、顧客サービスの向上を図る取り組みが始まっているという。街中ではイベント時の混雑解消や、交通機関の運行計画策定や災害時の避難誘導を行うために、人の流れ情報の活用に期待が高まっているとのことだ。

人の流れ認識とその利用イメージ

一方で、街中や商業施設内に設置した監視カメラの映像を活用して人の流れ情報を認識する場合、誰がいつどこで何をしていたかといった人の行動情報を第三者に知られてしまうという、プライバシーの問題があるという。 従来の技術で人の流れを認識する場合、人の顔や体格、性別など個人の特徴となる情報で検出して同じ人かどうかを判断したため個人が特定されてしまう場合もあり、活用できていないとの課題があったと同社は指摘する。

新技術では、人間が共通に持つ特徴により低解像度映像から頭部や胴体部分などの人間らしい部分を検出し、服装の色から同一人物を対応付ける判定方法を考案したとのことだ。

まず低解像度映像に対して人を検出する技術では、低解像度映像でも人の姿勢や撮影方向の影響を受けずに人間特有の特徴が残る部位として、頭部に着目。胴体部分の検出や人の前後関係の認識と組み合わせて、多数の人が重なり合って映っている場合でも複数の人の頭部と胴体部分をそれぞれ認識できるという。

低解像度映像からの人の特徴抽出のイメージ

服装の色で低解像度映像間の人を対応付ける技術では、検出した人の特徴を複数のカメラ間で対応付けすることで、カメラ間における人の動きを認識する。検出した人の服装の色から特徴的な色だけを選択して抽出することで、低解像度映像からも人の対応付けを安定して可能にしたとのことだ。

低解像度映像間の対応付けのイメージ

新技術を用いた屋内に実験では、約80%の人の追跡が可能となり、人の流れを検出できたという。 これにより、例えば店舗内の品ぞろえや店員の配置では、撮影される側のプライバシーに配慮した監視カメラ映像の利用が可能になり、個人を特定しない映像を使いながらも顧客サービスの向上を図ることが可能になるとしている。