岐阜大学は3月3日、国際基準を満たす治験薬製造設備を設置し、同設備によりクロイツフェルト・ヤコブ病(ヤコブ病)の治験薬の開発を進めると発表した。
治験薬製造には無菌状態が不可欠で、国際基準を満たす必要がある。今回設置された設備はそれを満たすもので、高温高圧下の環境で数十種類の有機化合物を合成して製薬し、無菌状態の設備内で分包することができる。こうした設備を大学で導入するのは世界で初めてとのことで、大学内で人体へ使用可能な治験薬を製造することが可能になる。
ヤコブ病は数カ月にわたる進行性痴呆や視力障害、錯乱、めまい、無感情などの症状が見られ、発病から3~12カ月で死亡する希少難病。原因は神経細胞に存在する「プリオン」と呼ばれるタンパク質が破壊され、異常構造となり毒性を帯びて神経細胞を殺すためとされているが、現在のところ有効な治療法は確立されていない。
同大学の大学院連合創薬医療情報研究科の桑田一夫 教授を中心とした研究グループはこれまでの研究で、プリオンタンパク質の正常構造を安定化させ、異常構造への変換を抑制する化合物「メディカルシャペロン」を治験薬として開発している。
新設備の設置により人体への治験が可能となることで、ヤコブ病を始めとするプリオン病の治療法の確立へとつながることが期待されるほか、アルツハイマー病など他の認知症の治療薬研究にも役立つと考えられている。なお、ヤコブ病に対する治験は2年後を予定している。