岡山大学は2月17日~18日、同大学鹿田キャンパス内のJunko Fukutake Hallで、医療展示会「中央西日本メディカルイノベーション2015」を開催した。
同展示会は産学金官を問わず医療に携わるさまざまな人々が集まり、講演や展示を通じて情報交換やビジネスマッチングを行う場となっており、今年で2回目の開催となる。本稿ではその展示ブースの模様を一部ご紹介する。
安全・安価な岡山大式人工網膜
現在存在しているアメリカの人工網膜はカメラ撮像を処理した電流信号を網膜の近くに埋め込んだ電極から出力する方式で、外部起電力が必要となるほか、生体適合性および分解能も悪く、価格も約1000万~1200万円と高額となる。
これに対し岡山大学方式の人工網膜はポリエチレンフィルムの表面に光電変換色素分子を化学結合させたもの。色素分子サイズの高分解能を有し、外部起電力は必要としない。また、動物実験を通じて生体に対し毒性が無いことがすでに実証されており、想定販売価格は100万円とアメリカ式と比べて遥かに安い。
2002年から開発研究が開始され、2015年、first-in-human医師主導治験を岡山大学病院で実施する予定となっている。
スマホを使って精子の運動性をチェック
不妊治療では顕微鏡を用いて精子の運動性および数を計測するため、自宅で精子の状態を確認することはほとんどできない。
岡山大の松浦宏治講師らは、少量の精液を試験紙上に置くと、30分後に色が変化するデバイスを開発。その紙をスマートフォンのカメラで撮影することで精液内の精子の数と運動性を判断することができる。顕微鏡が必要ないため、このデバイスを用いれば男性不妊のリスクを専門機関に行かなくても確認することができる。
現在、臨床研究が進められているほか、電気化学分析フォーマットについても検討が進められており、不妊治療関連だけでなく、他のバイオマーカー検出などへの応用も想定されるという。
Kinectを利用したVRで疼痛治療
病気や怪我がないのに痛みが続く慢性疼痛の一種である複合性局所疼痛症候群(CRPS)の研究を進めている岡山大大学院自然科学研究科(工)知能機械システム学講座の五福昭夫 教授らのブースでは、モーションセンサを用いたVRシステムが展示されていた。
これはCRPSに効果があるとされる鏡療法を、楽しみながら継続するために開発されたもので、モーションセンサにKinectを使用することで身体に特殊な装置を身につけることなく治療に取り組むことができる。Kinectとコンピュータという構成のため比較的安価で家庭への導入ハードルが低いのも特長だ。
今後、より精巧でリアリティの高いVRの生成や精度の高い動作計測が可能となれば、より高い治療効果が期待できるという。一方、システムを提供するための基盤づくりが進んでおらず、普及のための基盤整備において企業の持つ技術力と展開力が望まれている。