世界の大学の順位付けを行ういわゆる「世界大学ランキング」は、さまざまな企業や大学、政府などが作成し、公表しているが、中でも総合的な大学のランキングとして世界トップクラスとして認識されているのが、英国の世界大学評価機関Quacquarelli Symonds(QS)が毎年公表する「QS世界大学ランキング(World University Rankings:WUR)」だ。
QS AsiaのCEOを務めるMandy Mok氏 |
しかし、こうした大学ランキングは、なにをどうやって採点、格付けされ、順位づけされているかは、該当する大学自身も良くわかっていないことが多い。そうした現状を踏まえ、2014年12月17日、都内で「第1回 大学研究力強化ネットワーク・カンファレンス」が開催され、QS AsiaのCEOを務めるMandy Mok氏がQS大学ランキングならびにQSアジア大学ランキングがどのような評価で順位づけされるのか、について日本の大学関係者などに説明を行った。
6つの評価指標で構成される「QS世界大学ランキング」
世界3500超の大学を対象としているQS世界大学ランキングの評価は有識者からの評価が50%、各種データからが50%となっており、その内訳としては、他大学の教授・研究者といった関係者からの評価が40%、企業人事などの採用権限を持つ人がどういった人を採用したいか、という点10%、そして教員単位の引用論文数と学生1人あたりの教員比率、外人教員の比率。留学生の比率で構成で構成される。
評価指標
- 項目:配分
- 研究者による評価:40%
- 雇用者の評価:10%
- 学生1人あたり教員比率:20%
- 教員1人あたり論文引用数:20%
- 外国人教員比率:5%
- 留学生比率:5%
ちなみに、各教育機関からの回答率としては日本は35%で非常に悪いとするほか、米国、欧州の圏内では企業評価の比率が多い一方、韓国はまったくなく、日本は35位という位置づけになっているという。
では、医科系のみの大学などの特殊な事業がある場合の評価はどうなるかというと、「現実的な話をするとQSやQSのパートナーが開催したセミナーの参加者リストなどに基づいてアンケートを送っているほか、そうした参加者にさらに関係者を紹介してもらって、改めてQSから連絡を行っている。たとえば雇用者として医療機関は企業ではないという見方もあるが、日本の場合、そもそも雇用主からの回答率自体が悪く、日本全体のランキングの向上を目指すのであれば、そうした企業側に対するアプローチなども必要だ」と同氏は説明する。
世界大学ランキングとは評価ポイントが異なる「QSアジア大学ランキング」
一方の「QSアジア大学ランキング」も評価の比率は「QS世界大学ランキング」と同じかというと、実は異なっている。雇用者の評価10%、学生1人あたりの教員比率20%、外人教員の比率5%、留学生の比率5%は変わらないが、他大学の教授などの評価が30%と低くなり、教員1人あたり論文引用数がない変わりに、教員1人あたりの論文発表数15%、論文1件あたりの被引数15%が加えられている。
評価指標
- 項目:配分
- 研究者による評価:30%
- 雇用者の評価:10%
- 学生1人あたり教員比率:20%
- 教員1人あたりの論文発表数:15%
- 論文1件あたりの被引数:15%
- 外国人教員比率:5%
- 留学生比率:5%
大学のランク付けを星付けでも実施
QS世界大学ランキングは6つのカテゴリでの評価だが、これとは別に細かな評価をしてもらいたいというニーズに合わせたサービスとして、星付けによる評価も行っている。最高「5つ星+(☆☆☆☆☆ PLUS)」までの格付けがさまざまな分野でなされるこの仕組みについて、同氏は「ランク付けされたくないと思うかもしれないが、グローバルの評価基準をもとに、協定校の提携を行いたいと思っても、海外から見た大学の評価はなかなか難しいものがある。このランク付けの意味としては、例えば、留学生が希望の大学を調べたりするときに、世界の統一基準としての1つの目安として使ってもらうことなどが考えられる と説明する。
ちなみに、やはり世界大学ランキング上位の大学は星の数が多いところが多いという。ただし、カテゴリごとの評価となるので、例えば「教育」については星5つだが、「国際的」という面では星3つ、ということもあり、そうした大学は教育分野で星5つ、という点をアピールしたブランディングを推し進める戦略を展開しているという。
なお同氏は、QSそのものについて、単なる格付けを行う企業というものではなく、そうした格付けをもとに、大学や研究機関にブランディングを提供する企業である、と説明しており、世界に日本の大学をアピールして、存在感を増していくための手助けができれば、としていた。