マーケティング・オートメーション(以下、MA)は、企業のマーケティング活動を自動化するためのソフトウェアであり、今、最も注目されているビジネス・アプリケーション分野の1つである。

前編では、MAの中核機能が、有望な見込み顧客を営業部門に引き渡すまでのリード・マネジメントであると述べた。後編では、MAプラットフォームが、リード獲得から顧客獲得に至るまでのリード・マネジメント・プロセスをどのように支援するかについて説明する。

部門によって異なる「リード」の意味

一般に、リード(Lead)は、日本語では見込み顧客と訳されるが、英語では見込み顧客は顧客(Customer)とは区別して扱われる。これは、部門によって見込み顧客に関する認識が異なるためと見られる。例えば、営業部門にとっての見込み顧客は受注につながる確度の高い顧客であるが、マーケティング部門にとってのそれはセミナーや展示会で接点のある顧客のことであったりする。

また、B2B向けのビジネスを営んでいる企業の場合、購買プロセスが長く、商材によっては受注獲得までに1年以上を費やす場合もある。意思決定のステークホルダーは利用部門だけでなく、複数の部門に散在するし、定期人事異動で重要な意思決定者が異動したりすることもある。そのため、コンタクトが可能なリードは個人であるが、受注確度が高まるにつれて接点を持つ個人が増えていく。そして、受注獲得の時点で初めて、個人ではなく法人単位で顧客を認識するといった特徴がある。

つまり、マーケティング活動のリードと営業活動のリードは異なるわけであり、それゆえにセールス・リードのマネジメントを行うSFA(Sales Force Automation)とマーケティング・リードのマネジメントを行うMAは別々のものとなる。

リード獲得から顧客獲得に至るまでのビジネスプロセスとは?

MAにおけるリード・マネジメントのビジネスプロセスは、以下の図に示すように3つに大別される。そして、リードは最後の顧客の獲得に至るまでの選別の過程で徐々に絞り込まれていくことから、入り口が広くて出口が狭いじょうご(ファネル)にたとえられることもある。

リード獲得から顧客獲得までのビジネスプロセス

  • リードの獲得(Lead Generation):見込み顧客になりそうな個人のリストを作成するまでのプロセス
  • リードの育成(Lead Nurturing):見込み顧客に対して段階的に購入意欲を高めてもらうためのプロセス
  • リードの選別(Lead Qualification):リードの中から購入の可能性が高いものを選別するためのプロセス

マーケティング担当者は、オフラインのセミナーや展示会のほか、メール、ブログ、SEOなどのオンラインのツールも含め、さまざまなチャネルを駆使してリードを獲得する。

育成のプロセスとは、自社が提供する商材についての知識を深めてもらう活動である。リードが必要としている情報を提供することはもちろん、リードが抱えている潜在的なニーズを見極めることを活動の主眼としている。

最後の選別のプロセスは、何らかの評価基準を用いて各リードが顧客獲得に至るかを評価するプロセスである。MAプラットフォームはリード選別を支援するため、スコアリング機能を提供している。

また図では、リード育成にはマーケティング・リードとセールス・リードの2種類に加え、マーケティング活動の営業活動をつなぐアウトプットとしてのリードがあることも示している。

  • MQL(Marketing Qualified Lead):マーケティング活動で顧客獲得に至る確度が高いと判断したリード
  • SAL(Sales Approved Lead):マーケティング担当者と営業担当者の双方が顧客獲得の確度が高いと判断したリード
  • SQL(Sales Qualified Lead):営業活動で顧客獲得の確度が高いと判断したリード

マーケティング・オートメーションが必要になる理由

MAが対象としているリード・マネジメントは、SFAが対象とするリード・マネジメントよりも上流のプロセスであることは、上記の図で示したとおりである。SQLはいわゆる顧客からの引き合いに相当するリードであり、MQLと比べて短期間に顧客獲得に至る。

マーケティングが弱い企業は、おそらくMQLを育成するノウハウが組織に蓄積されていないか、営業担当者個人がMQLも抱えておりSQLの処理を優先していたりするのではないだろうか。このような状況を踏まえると、リード育成のプロセスはマーケティングと営業で分離することが望ましい。

さらに、このプロセスをうまく運用するには、マーケティングと営業の相互協力が不可欠である。なぜなら、スコアリングに用いる判断ルールは、営業が持つ顧客を分析したデータとマーケティングが持つリードを分析したデータ両方を基にメンテナンスする必要があるからだ。

このメンテナンスは、マーケティングと営業双方の活動の学習と経験を通じたものであり、スコアリングの精度を高めることに貢献する。また、近年、ソーシャルやモバイルといった技術の大変革により、リード獲得のためのオンラインチャネルが多様化する傾向にある。営業としては、マーケティングから得られる確度の高いリードは多ければ多いほどうれしい。

つまり、新しいファネルの入り口は広くなる傾向にあり、マーケティング担当者のスキル次第でファネルの出口も広くできる可能性が高い。マーケティングから営業までの連続する活動のマネジメントをうまく行うには、ITがないと不可能である。このようなIT環境の変化をうまく活用するためにも、SFAとの連携を視野に入れたMAに特化したソフトウェアが必要となるのだ。