済生会熊本病院とNECは2月9日、電子カルテに入力・蓄積した診療データを収集・分析・見える化して、治療プロセスの品質管理を支援するソフトウェア「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」を開発したと発表した。
現在、多くの病院では、入院患者に対して、入院中にどのような治療や検査を行っていくかといった治療プロセスを疾病ごとに定めた「標準診療計画」に基づいて治療を行っている。この治療プロセスの品質を管理し改善していくために、患者ごとに目標(アウトカム)を設定し、目標未達成時(バリアンス)の患者状況などの情報を収集して分析するクリニカルパスという手法が導入されている。同手法を導入することで、治療プロセスの品質管理・改善に加え、チーム医療の実現や、患者へのインフォームドコンセントへの活用など、医療の質の向上が期待されている。
クリニカルパスにおいては、標準治療計画から患者の経過が逸脱していないかを把握する上で、目標未達成時(バリアンス)の情報を常に収集して分析することが重要になる。しかし、従来の電子カルテシステムでは、自由記述でのデータ入力が主で用語が標準化されていなかったことから、分析可能な形式にデータを加工する必要があり、分析に手間と時間が必要となる課題があった。
そこで今回、「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」を開発し、あらかじめデータ分析が可能な形式で、電子カルテから日々の診療データを収集する仕組みを構築した。これにより、標準診療計画に基づいた治療プロセスが患者の経過に与えた影響について、タイムリーな分析・確認を実現し、次の計画策定を支援する。
済生会熊本病院における試行では、電子カルテに日々の記録を入力することで、自動的に在院日数・バリアンス(目標未達成時)の件数やその内容・費用の表示が可能になった。これによって問題となる症例を瞬時に抽出可能となり、入院日数が長引く患者には疼痛(痛み)コントロールに問題があることがわかるなど、早期に現場へのフィードバックを実現可能にする。
また、日本クリニカルパス学会監修の患者状態アウトカム用語集(Basic Outcome Master:BOM)を使用し、1日分の診療データを記録できる日めくり記録機能を搭載した。同機能により、バリアンス発生(目標未達成)と判定した後すぐに、判定内容を決まった用語・形式で記録可能となった。さらに、アウトカム(達成目標)とアウトカムの達成を判断する観察項目や実測値などの根拠データを紐付けての記録を実現する。より正確なデータ記録を実現することで、従来は2か月を要していた分析用のデータ収集作業を省略することが可能になる。
さらに、済生会熊本病院がクリニカルパス活動を通じて、診療プロセス分析を長年行ってきたノウハウと実績を活用したビューワ機能を搭載した。患者別の入院日数、バリアンス(目標未達成)の内容や件数・医療資源の投入状況のバラつき・偏りの状況を自動でグラフ化し、一覧で確認できるとともに、CSV形式でのデータ出力も可能となっている。
そして、診療現場の医師や看護師らが、電子カルテ端末からビューワを起動し、画面上で担当患者のバリアンス(目標未達成)発生状況などを瞬時に確認することが可能。また、治療プロセスを疾病ごとに定めた「標準診療計画」から外れた症例の治療内容や患者状態を確認することで、治療成績に影響を与えそうなバリアンス(目標未達成)を予測できるという。