東南アジアを中心に、位置情報を活用したモバイル広告配信DSPを提供してきたAdNearが、マイクロアドプラスと戦略的パートナーシップを提携し、日本市場でのビジネスを開始しようとしている。
単なる位置情報に基づいたターゲティング広告ではなく、より細かいターゲットを指定できる上に、その効果測定を商品開発にも活用できるという新しいソリューションの実態とはどのようなものか、両社に聞いた。
東南アジアで展開するAdNearとマイクロアドプラスが提携
位置情報をビジネスに活用しようという動きは、かなり前からある。GPSを搭載した携帯電話が普及した頃から、ユーザーの現在位置に合わせた情報配信をしようという取り組みはあったし、近年盛り上がっているビッグデータ活用の中にも活用すべきデータとして位置情報が含まれている。しかし、ビジネスに具体的な効果をもたらした事例というのはそれほど多くないのが実情だ。
マイクロアドプラス 第1セールスユニット チーフアカウントプランナー 角谷佳祐氏 |
「これまで位置情報が今ひとつ行かせてこなかったのは、位置情報が単独で存在したからだと感じています」と語るのは、マイクロアドプラス 第1セールスユニット チーフアカウントプランナーとなる角谷佳祐氏だ。
マイクロアドプラスは、アドネットワーク事業を展開し、DPS領域にて日本における大きなシェアを持つマイクロアドの戦略的子会社。マイクロアド製品の販売を手がけるだけでなく、海外の新プロダクトを日本国内にて展開することにも注力する。そうした流れの中で誕生した新しい取り組みが、位置情報を活用するAdNearとの戦略的パートナーシップだ。
AdNearはシンガポールに本社を構え、東南アジアを中心に発展してきた企業で、位置情報を活用したモバイル広告配信のDSPを提供する。大きな特徴は、GPSのみに頼らない位置計測技術と、取得した位置情報に付加するカスタムプロファイルの存在だ。このAdNearが2014年10月に日本にオフィスを構え、マイクロアドプラスとともに日本市場でのビジネスを開始しようとしている。
GPSに頼らない位置情報取得で、ジオフェンスキャンペーンを実現
まずは、AdNearの展開する位置情報活用サービスについて紹介しよう。一般的な位置情報関連サービスとはかなり違いがある。
AdNearのサービスでは、スマートフォンアプリ向けのバナー広告配信を通して、位置情報の取得を行う。ユーザーが広告表示のあるアプリを起動した際、その端末がどこにいたのかという位置情報を取得する方式で、個人を特定できる情報は取得しない。昨今、スマートフォンのバッテリー節約などのためにGPSをオフにしているユーザーも多いが、AdNearの場合は、キャリアやWi-Fiのシグナル情報も活用し、GPSがオフになっている場合でも位置情報を取得できるのが1つの特徴だ。
この位置情報を活用し、ジオフェンスキャンペーンを展開できる。例えば、渋谷駅から1km圏内にいる人を対象に広告を配信したい、というようなことが実現できるわけだ。正確にいえば、渋谷駅から1km圏内で近い時間に広告表示のあるアプリを起動した人を対象にするわけだが、GPSをオフにしている人も対象にできるのがおもしろい。
さらに、ここにユーザープロファイルを掛け合わせ、「渋谷駅から1km圏内にいる20代の女性」というようなターゲティングも可能となる。このターゲティングを可能にするのは、AdNear独自のユーザープロファイリングだ。