野村総合研究所(NRI)は1月29日、2014年12月から2015年1月まで、特別な設備を必要とせずにスマートフォンの位置を把握できる、地磁気データを使った新しい屋内測位技術の実証実験を、丸の内ビルディングおよび新丸の内ビルディングを中心とした東京丸の内エリアで実施したと発表した。

新丸の内ビルディングでの実証実験風景

実証実験では、GPSの電波が届きにくい地下街やビル内で、地磁気データを用いた新しい屋内測位技術を使って、測位精度を検証するもの。測位を行う際は、建物が持つ磁場特性を活用し、位置を特定する。具体的には、事前に、建物や地下街の地図情報とそれぞれの地点における地磁気データを、スマートフォンのアプリケーションを使って取得し、データベースに登録。この地磁気データベースと、現在iPhoneやAndroid端末がある地点の地磁気データと重ね合わせることにより、現在地が特定できる。

地磁気データを使った測位のイメージ

検証では、丸の内ビルディングおよび新丸の内ビルディングの商業フロアの一部と地下において、誤差2m程度という高い精度で、リアルタイムに現在地を特定できることを確認したという。また、測位のログデータを分析することで、屋内における利用者の行動(動線)を可視化できることも、確認している。

実際に歩いた経路(左、青線)と地磁気測位で把握した動線(右、緑線)

Wi-Fiやビーコンを活用する方式と異なり、地磁気データによる測位では電波の発信機器の設置および、その機器の運用・維持管理が不要となるのが特徴。また、地磁気データを使った測位技術は電子コンパス機能が搭載されたiPhoneやAndroid端末など、多くのスマートフォンで利用できる点もメリットだという。

代表的な屋内測位技術とその特徴

この技術を活用することで、商業施設で、端末利用者の店舗への案内や、利用者が店舗に近づいた際におすすめ情報を端末に提供するO2Oサービスなどで利用することが期待される。

NRIでは、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、外国人旅行者を含む様々な人々に対して、ロケーション測位技術などの情報技術を活用した、おもてなしサービスの実現を目指しているという。