日研総業は13日、「モノづくりニッポンe仕事×ReVALUE NIPPON」プロジェクト発表会を行い、元サッカー日本代表の中田英寿氏らが登壇。同プロジェクトの第2弾として、漆芸家で人間国宝の室瀬和美氏と関西ペイントが参画し、「塗師」を育成するキャンペーンをスタートさせることを発表した。
ニッポンのモノづくりを世界へ
「モノづくりニッポン e仕事×ReVALUE NIPPON」とは、モノづくりによって日本の若者の働き方を豊かにするためのプロジェクト。製造業専門の求人サイト「e仕事」を運営する日研総業と、日本文化を再発見していく「ReVALUE NIPPON」を立ち上げた元サッカー日本代表・中田英寿氏のコラボにより実現したものだ。若い世代がモノづくりのスキルを身につけ、「会社に就く」のではなく「職に就く」という、主体的で自由な働き方を提案・提供していくことを目的としている。
同プロジェクトの第1弾として、2014年6月にブラジルで期間限定カフェ「nakata.net Cafe 2014@サンパウロ」をオープン。働くモノづくりPRスタッフを募集・派遣を行い、国内外に日本のモノづくりの魅力を発信した。
そして第2弾となる今回は「ジャパンクオリティを継ぐ」をテーマに掲げ、一流の「塗師」を募集・育成する。監修には中田氏のほか、漆芸家で重要無形文化財(人間国宝)の室瀬和美氏ら塗装分野のスペシャリストが携わり、日本が誇る「塗り」の技術を学習。研修の一環として、ミラノ万博にあわせて開催される現地でのイベントで、「塗り」をテーマにしたジャパンクオリティの魅力を発信する試みも予定されている。
サッカーのトップ選手から教わるようなもの
同発表会の席で、日研総業 代表取締役社長の清水浩二氏は「次世代に日本のモノづくりの魅力、カッコよさ、面白さ、新しい価値を伝えていきたい」とプロジェクト主旨を強くアピール。
続いて登壇した中田氏は、数ある日本の技術から「塗り」を選んだ理由について「全国の工芸を見て回った中で、蒔絵(漆芸の装飾)に惹かれた」と明かし、「サッカーで言えば、世界のトップ選手に教わるようなもの。貴重な機会なので、技術だけでなく文化の重さも学んでほしい」と、応募者に呼びかけた。
室瀬氏は「日本の精密機械にも、実は漆塗りの技術が隠れている。天体望遠鏡のレンズの磨き方は、漆の磨き方と同じなんです」と、伝統工芸が決して旧世代の技術ではないと話す。実は、室瀬氏は藝大サッカー部出身。中田氏は「初めてお会いしたときから、サッカーつながりで良くしてくださった。たまにサッカー談義もしますよ」と、笑顔を見せた。
職人はいつから“職人”か?
後半には、日本の塗料メーカーのトップシェアを誇る関西ペイント 執行役員の宮武啓次氏と、板金塗装の塗装職人でベストペインターコンテスト2011で日本代表に選出された菅原健二氏が登壇。「塗るという仕事」について、トークセッションが行なわれた。
トークの中で、中田氏が「いつから“職人”と呼ばれるようになるのか」と疑問を挙げると、塗装職人の菅原氏は「先輩に追いつきたい、とがむしゃらでいるうちに、いつのまにか“職人”と呼ばれていた」と話した。続けて室瀬氏は、定義は難しいとしながらも「“作家”は名乗れるけれど、“職人”は、名乗ってなれるものではない。周りが決めていくこと」と話し、“職人論”が熱く語られた。関西ペイントの宮武氏は「日本は四季があり、寒い地域から暑い地域までいろいろある。それに応じて、塗料を使い分ける幅広さは日本ならでは」と、「塗り」で日本が世界に誇れるポイントをアピールした。
なお、今回のプロジェクト「塗師への道」では、塗装業の経験者はもちろん、製造業に興味がある人、研修プログラムのみの希望する人など、広く募集する。募集期間は1月31日まで。