日立マクセルは1月13日、独自のナノ分散技術を用いたMID(Molded Interconnect Device:3次元成形回路部品)向けの新プロセス技術とマスターバッチ材料を開発したと発表した。
MIDは、レーザやインクジェットプリンタなどの描画装置とめっきやスパッタリングなどの成膜技術を組み合わせ、3次元形状をもつ樹脂部品上に直接電気回路パターンを形成した射出成形品である。電気部品間の配線の簡素化、省スペースでの配線取り回しによる機器の小型化、3次元成形部品への直接実装によるデザイン自由度の向上などを図ることができ、スマートフォンなどの携帯端末やウェアラブル機器、自動車、小型医療機器などで採用が広がっている。
今回のMID用新プロセス技術は、特殊な無電解めっき触媒を使わずにABS樹脂などの汎用樹脂で作製した部品上に電気回路パターンを形成することができ、コスト低減を実現する。具体的には、汎用樹脂にマスターバッチ材を添加して射出成形した樹脂部品の表面に触媒失活剤を塗布し、レーザ描画装置により回路パターンを描画する。描画後は、通常の回路基板めっきプロセスに通すことで描画部のみにめっき膜が形成される。マスターバッチ材と触媒失活材を組み合わせて使うことにより、回路パターン部以外でのめっき膜の付着を抑えることができる。加えて、環境負荷物質の六価クロムなどによる前処理が不要である。
また、新プロセス技術は、ABS樹脂やナイロン樹脂(6ナイロン、66ナイロン)、芳香族ナイロン樹脂、非晶質ナイロン、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの汎用的な樹脂に対応している。特に、耐熱性に優れる芳香族ナイロン樹脂は、リフロー実装に対応したMIDの開発、製品化に適している。この他、レーザとしては、炭酸ガスレーザ、固体レーザ(YAG/YVO4)、半導体レーザ、ファイバーレーザなどの各種加工用レーザに対応する。
なお、同社では、このMID用新プロセス技術に対応した試作評価設備を導入しており、顧客での部品試作に対応する予定とコメントしている。