「IMC」って何?
なんとなく分かっているつもりの基本的なマーケティング用語を SMMLabがやさしく解説します!

用語説明:【IMC(Integrated Marketing Communications=統合型マーケティング・コミュニケーション】

マスメディア、店頭、電話、FAX、インターネットなどといった様々な顧客接点を統合的に捉え、広告、PR 、セールス・プロモーション、ダイレクト・マーケティング、製品パッケージといったあらゆるマーケティング・コミュニケーション活動を個別最適で行うのではなく、一貫性をもって効果を最大化しようとする考え方、戦略のこと。

1990年代初めに米国ノースウェスタン大学のドン・E ・シュルツ教授らによって提唱された。あらゆるマーケティング・コミュニケーション活動を、受け手である消費者の視点で再構築し、ブランドのメッセージに一貫性を持たせるという初期段階から、広報・営業・商品開発・社内外の関係者等のオペレーションレベルまで統合するIMC2.0を経て、現在は「ビッグデータ」をコミュニケーション活動に統合するIMC3.0へと進化している

解説

時代とともに進化する統合型マーケティングフレームワーク

インターネットの登場によって双方向に変化した企業と消費者の関係は、ソーシャルメディアの隆盛によって更に多様化し、単にチャネルやマーケティング手法を統合するだけでは、一貫したメッセージを深く伝えることは難しくなりました。人々が自由にコミュニケーションするフラットなつながりが広がる中で、「ブランド」は企業が一方的に訴求するものではなく、消費者間で語られる情報の中で作られていくものになりつつあります。

また、市場が成熟・飽和し、製品のコモディティ化が進む今、機能や品質、価格だけでは差別化が難しく、消費者の購買意欲を刺激して新たな消費を喚起していくためには、消費者の琴線に触れるような力強いブランド・メッセージが重要となっています。

ブランド・ストーリーテリングに不可欠なビッグデータ統合

昨年「Content Marketing World 2013」の基調講演に登壇したドン・シュルツ教授は、

“「今一度、ブランドはストーリーを語らなければならい。」、「ブランドを作るのはコンテンツだ。」、「コンテンツリッチな環境からブランドは生まれる。」と、テクノロジーはもちろん重要だが、その前に考えなければならないことが、コンテンツであり、ブランド・ストーリーテリングである”

と主張しました。これは今年のコンテンツマーケティングの盛り上がりも、IMC3.0の潮流上にあることを示唆しています。

引用:IMCの父、ドン・シュルツ教授が語るコンテンツマーケティング
http://contentmarketinglab.jp/trend-in-usa/content-marketing-world2013-1.html

モノと情報が溢れ、消費者の購買行動が複雑化する中で、「語られ」「共感される」ブランド・メッセージを紡ぎだし、適切なタイミングで確実に伝えていくには、「ビッグデータ」によって詳細な「カスタマージャーニー(認知から購買に至るまでのプロセス)」を可視化し、そこから導き出される正確な消費者インサイトの把握が不可欠です。そして、その精緻な顧客インサイトに基づいて、一人一人に寄り添った商品やサービスを展開する「顧客目線での双方向コミュニケーション設計」は、O2O(Online to Offline)やオムニチャネル、その先の「共創」の実現にも繋がるはずです。

参考:「カスタマージャーニー」とは?
http://smmlab.jp/?p=28511

「オムニチャネル」とは?
http://smmlab.jp/?p=33805

「戦略的ビジネスプロセス」へと進化するIMC

今年はプライベートDMPの構築に着手する企業が増えましたが、日本ではまだまだ旧態然の縦割り組織も多く、コミュニケーション技法の統合はもとより、マーケティング活動のオペレーションレベルの統合も実現できていない場合が少なくありません。しかしそもそも、企業全体としてのIMC戦略が無くては、データを集めてもその後の活用を設計することは難しいでしょう。重要なのはどこからどんなデータを集めるかではなく、どのような目的のためにどんなデータが必要なのか、集めたデータをどう活用するかです。企業活動全体を俯瞰的に見て、部署横断、横串のマーケティング戦略設計が出来るCMOが待望されるはそのためでしょう。

参考:「DMP」とは?
http://smmlab.jp/?p=30322

「CMO」とは?
http://smmlab.jp/?p=34378

ソーシャルメディアにより企業の透明化が進む今、広告や宣伝、PRでメッセージを一方的に伝えるだけのコミュニケーションでは、消費に至るまでの深い愛着や信頼という関係性は醸成出来ません。従来の顧客接点のみならず、商品開発、販売、物流といったあらゆる企業活動全般において、全社的に顧客理解を深めていかなくては、「ビッグデータ」時代の顧客中心マーケティングは実現できないのです。

ソーシャルメディアが成熟期を迎え、マーケティングの全体最適化が叫ばれる今こそ、IMCを単なるマーケティング手法論としてではなく、企業構造の変革も含めた「戦略的ビジネスプロセス」として捉え、本質的に取り組まなければならない時が来ているのではないでしょうか。

イラスト

速瀬 みさき

1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!

公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ

本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。

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