マイナビニュースが主催するイベント「マイナビニュースフォーラム2014 Winter for データ活用」が12月9日、東京都・秋葉原UDXにて開催された。3つのキーノートと8つのセッションで構成される同イベントには、マーケティングや経営、システム構築に関わるビジネスパーソン300人が来場し、各セッションに聞き入った。
本稿では、良品計画にてWEB事業部長を務める奥谷考司氏によるキーノート第1弾「無印良品ネットストア『お客様と時間を共有する』CRM & Social Media戦略『MUJI DIGITAL Marketingの展望』」のレポートをお届けする。
無印良品が大切にする「顧客時間」とは
良品計画 WEB事業部長 奥谷考司氏 |
小売業における重要なデータの1つに、POSより取得可能な購買データがある。しかし今後は、このデータだけに注目し判断していては勝ち残れないと奥谷氏は説明する。
「当社の掲げる顧客時間とは、商品の検討から購入、使用や消費に至るまですべてのフェーズを指します。オムニチャネル化が叫ばれる昨今、マーケティング施策において、これらの段階を考慮した上で、顧客にいかにリピーターになってもらうかや、いかにエンゲージメントを築いていくのかが重要だと考えています」(奥谷氏)
顧客時間に寄り添ったコミュニケーションの実現を可能とするのは、購買データだけでなく、検討段階や使用・消費段階での生活者データ。無印良品では、生活者の身近にチャネルを設け、データの取得・分析による生活者の可視化とコミュニケーションの実現を図る。
例えば、生活者にとって身近なチャネルとは、ソーシャルメディアの活用やアプリ「MUJI passport」となる。
MUJI passportの狙いは
「MUJI passport」とは、会員証としての役割のほか、ポイントやクーポンの確認、店舗チェックイン、ニュース閲覧、商品・店舗検索などの機能を提供する公式アプリケーション。
同社はこれまで、ソーシャルメディアの活用やアプリの開発などを行ってきたが、同アプリは、生活者とのコミュニケーションツールとしてだけでなく、CRM(Customer Relationship Management)といった側面があるという。
「MUJI passportによって、従来から存在するクレジットカードやnet member、ソーシャルメディアといったミニCRMを統合したいと思っていました。これにより、顧客時間の全体的な把握が可能になるだろうとの狙いがあります」(奥谷氏)
同アプリの導入により、顧客時間に沿ったコミュニケーションチャネルの設置を実現し、生活者データの可視化を図る。そして、同データをマーケティング施策へ活用し、再度効果測定を行う。
しかし、同氏によれば、アプリ導入の目的はこれだけではないという。
「オムニチャネル時代でのコミュニケーションにおいて、顧客に、オンラインとオフラインの両方で時間を使って頂くことが重要だと考えています。MUJI passportは、店舗でのイベントページの閲覧や商品検索などの検討段階や、購入後の使用感や要望のヒアリングなど消費段階において、オンラインで時間を使ってもらうことを可能とします」(奥谷氏)
このように、オンライン上で生活者とのコミュニケーションを図り、マーケティング施策の可視化と持続的な来客数・売上の増加を担うのがMUJI passportの役割だという。
MUJI DIGITAL MARKETING3.0にむけて
10月3日時点、MUJI passportのダウンロード数は約240万で、その3分の2がiOS利用。MUJIカードなどを含む各チャネルより取得するデータは、性別や年代、マイルステージ、購入・閲覧商品、累計購入金額、購入頻度、利用店舗、口コミなどとなる。
CRMとしてのMUJI passportを導入し、どのような情報が見えてきたのだろうか。
奥谷氏は、その1つとしてデモグラをあげる。ネットストアを含む無印良品全店舗の会員は、多くが30代~40代の女性(53%)。会員を年齢構成別に見ると、20代までの若年層の利用が最も多いのはMUJI passportとなる一方、40代以降ではMUJIカードの利用が多いと説明する。
また、MUJI passportアプリの利用者を見ていくと、視聴者数は平均で1日12~14万人、プッシュ通知時には50万人の反応があるという。
生活者のいる場所から身近な店舗にチェックインし、マイルを受け取ることが可能な機能からは、チェックイン後の購入タイミングが明らかになり、最も購入に結びつきやすい時間帯は30分後だという結果となった。
どのような購入履歴のある生活者が、どこでアプリを開き、どの店舗で購入に至ったかという顧客時間の可視化を実現し、これらを基にコミュニケーション施策を打っていく。
「私たちのマイルサービスは、売上向上だけでなく、顧客とのエンゲージメントを築くことを目的に行っています。これこそが新しいeコマース(Engagement Commerce)だと言えるのではないでしょうか」(奥谷氏)
同氏は、意味のない広告や値引きを辞め、CRMなどのIT投資を実施すると説明。具体的な取組としては、2015年2月を目処に中国でのMUJI passportの提供開始を目指し、構築を行っているという。
将来的には、アジア全域において、MUJI passportを使ったデジタルマーケティングと生活者とのコミュニケーションを実現したい考えだ。