日本ヒューレット・パッカード(HP)は12月9日、ミッションクリティカル環境のワークロードに最適化したサーバ新製品「HP Integrity Superdome X」の提供を開始した。インテルXeonプロセッサE7 v2ファミリーを最大16CPU/240コア搭載可能で、メモリは最大16ソケット12TBまでサポートする。さまざまなRAS機能により、信頼性を一般的なx86サーバの20倍にまで高めた。最小構成価格(税別)は2,397万1000円から。

「HP Integrity Superdome X」

HP Integrity Superdome Xは、"ワークロード特化型"を掲げるHPサーバ製品のなかでも、汎用Linuxが稼働するミッションクリティカル環境向けに提供するサーバプラットフォーム製品。同社ではミッションクリティカル環境を持続的成長が求められる既存のミッションクリティカル環境と、企業の成長のための原動力となる新しいミッションクリティカル環境の2つに分けて製品を展開する。前者の領域で展開するのがHP UX、HP NonStop、OpenVMSといった製品で、後者で展開するのが、今回のIntegrity Superdome Xとなる。

「HP Integrity Superdome X」概要

HPサーバー事業統括本部 事業統括本部長 手島主税氏

HPサーバー事業統括本部 事業統括本部長の手島主税氏は、新しいミッションクリティカル環境について「ビッグデータ/HPC、公共/社会インフラ、異業種間融合/連携、メールやコラボレーションなど、企業の新たな成長のエンジンとなる世界であり、今後、ミッションクリティカル性が高まっていくと考えている。こうした環境を支えるプラットフォームには3つの要素が必要だ。それは、大量のデータ処理、解析を行うための『異次元の性能』、可用性を追求するための『圧倒的な信頼性』、さまざまなワークロードとアプリケーションを稼働させるための『オープン性』だ」とし、新製品がこれら特徴を備えた新しいプラットフォームであることを強調した。

続いて、米HPでミッションクリティカルサーバ事業の責任者である、エンタープライズサーバービジネス バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャ リック・ルイス(Ric Lewis)氏が登壇。HP Integrity Superdome Xの狙いと特徴を解説した。

米HP エンタープライズサーバービジネス バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャ リック・ルイス(Ric Lewis)氏

ルイス氏は、新製品の特徴のうちパフォーマンスについて、「ビジネストランザクションに耐える画期的なパフォーマンスを実現した。eコマース処理でのJavaのベンチマーク(SPECjbb 2013)ではProLiant DL580 Gen8と比較して4倍の性能差があった」と説明。

また、信頼性については「エラー予測やフォールトトレラントなどの新しい機能により、一般的なx86サーバと比較して20倍の信頼性を実現した。ダウンタイムは60%削減できる」とした。さらに、汎用LinuxとOSSを稼働できるオープン性を持ちながら、競合のUNIX環境と比較して32%のTCO削減ができるなど、投資の保護と経済性を高める製品に仕上げたと強調した。

HP Integrity Superdome Xのパフォーマンス

発表会には、ハードウェアを共同開発したNECのITプラットフォーム事業部長、西村知泰氏が参加し、NEC/HP開発協業の取り組みを説明した。

NECでは、1995年にHP UX領域で協業を開始し、以降、HP社製サーバのOEM、ハードウェア/OSの共同開発、NEC社製サーバの開発など、広範囲な協業関係を構築してきた。2013年7月には、HP-UXサーバだけでなく、Linuxサーバを対象としたエンタープライズサーバの製品技術、製品開発に関する包括的な協業関係に拡大。今回の製品発表は、その協業の成果だとした。

HPとNECの競業の歴史

NEC ITプラットフォーム事業部長、西村知泰氏

「20年におよぶ両社の協業経験と実績を生かし、密なチームワークによって開発することができた。業界最高レベルの高拡張性Xeonプラットフォームとなっている。NECでは、2014年度第四半期にNEC社製品として出荷を開始する。適用分野としてはビッグデータ活用、大規模システム統合化仮想化基盤、科学技術計算を想定している」(西村氏)

製品の機能詳細については、HPサーバー事業統括本部 HPサーバー製品統括本部 エンタープライズサーバー製品ビジネス開発部 部長の中井大士氏が解説した。

パフォーマンスについては、4ソケットのHP ProLiant DL580 Gen8、8ソケットのHP Superdome X、16ソケットのSuperdome XをSPECjbb2013の測定したところ、ソケット数が倍になるとパフォーマンスが2.3倍、ソケット数が4倍でパフォーマンスが4.4倍と、"リニア以上"に向上するとの結果を示した。大規模データ分析でも、Superdome Xの240コアで、他社の640コアのサーバと同等の性能を実現しており、コアあたりの性能は約5倍に達すると説明した。

HPサーバー事業統括本部 HPサーバー製品統括本部 エンタープライズサーバー製品ビジネス開発部 部長 中井大士氏

信頼性については、障害検知から障害の封じ込め、原因自動分析、自動切り離し、自動リカバリなど、HPがミッションクリティカルな領域で蓄積してきた技術とノウハウを適用した。

具体的には、HP Superdome 2 HP-UXで提供してきたような、メモリ保護機能「Double Device Data Correction」、OSと連携したメモリの障害復旧「HP Memory Quarantine」、OSと連携したコアの障害復旧「HP Advanced Error Recovery」、I/Oエラーの封じ込め「PCI Live Error Recovery」、物理パーティション「nPars」、セルフヒーリング・ファブリック、クロックの二重化(動的切り替え&ホットプラグ)、故障箇所(CPU、メモリ、ブレード)の自動切り離し、ファームウェアによる自己診断機能「Analysis Engine」などを提供する。

国内展開としては、「ビッグデータ、HPC、基幹システムの3つのワークロードを中心として、新しいミッションクリティカルワークロードに向けて、パートナー、アプリケーション、ミドルウェア情報、検証情報などをWebや媒体などで紹介し、協業でのビジネスを推進する。オープンならではの柔軟性を生かし、新しいソリューション開発とパートナーエコシステムを拡大させる」とのこと。「HP プロアクティブケア アドバンスト」「HP データセンターケア」などのサポートサービスも提供する。

ターゲットとするワークロード