日本マイクロソフトは12月8日、公共機関向けクラウド事業に関する記者説明会を開催した。

日本マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当 織田 浩義氏

説明会には、同社執行役 常務でパブリックセクターを担当する織田 浩義氏が登壇。これまでの日本におけるクラウド事業の取り組みついて触れ、「2月にはMicrosoft Azureの日本データセンターを開設し、先日にはOffice 365とMicrosoft Dynamics CRMの国内運用もアナウンスさせていただいた」と、日本法人として国内企業に対する最大限の成果をアピールした。

もちろん、データセンターはただその場にあるだけでは意味がない。マイクロソフトは国内最高レベルの耐震性を誇るセンターを用意しており、東日本と西日本という2リージョンに分けて設置。ディザスターリカバリーを国内環境だけで提供している。

また、海外系クラウドベンダーの中にはサービス利用時の規約として「欧米の法律に基づいた運用」や「管轄裁判所がUS」といったケースがあるというが、マイクロソフトの日本データセンターのサービス提供はすべて「日本の法律に基づき、日本の裁判所が管轄」(織田氏)となっている。

こうした「信頼できるクラウドサービス」の取り組みは、日本マイクロソフトとしてだけではなく、"Microsoft"として行っている部分もある。「トラストワージークラウド」と呼ばれる取り組みでは、自社のデータに対して誰がアクセスしているのか、どのように管理されているのか、どこに保管されているのか、どういう基準で運用されているのかをマイクロソフトとしてはっきりさせている。

サイバーセキュリティ面でも、ISO 27034-1に準拠しており、自社ソフトウェアを中心に基盤を構築しているため、「セキュリティ的に最も堅牢」だという。これは、米国の国防総省についで世界で2番目にサイバー攻撃を受けているマイクロソフトだからこそできることで「その知見をセキュリティに活かしている」のだという。

ほかにもコンプライアンス対応や透明性レポートなど、あらゆる情報管理において、法人ユーザーの要望に応えることを明確にした上で織田氏は、「お客さまのデータは、あくまでお客様のためのデータ。FBIや政府組織からアクセスしたいと言われても、お客さまに確認するプロセスを経てでなければ開示しない。もちろん、自社の営利目的や広告目的などへの利用も一切禁止している。コンプライアンスについては、15業種に特化したものを提供しているが、今後もその他の業種に対応できるよう、最大限努力したい」と話していた。

パートナーとクラウド化支援策を拡充

こうしたクラウドに対する安心・安全の追求は、当然公共機関にとっても強い味方となる。そこでマイクロソフトが提案するのは、公共機関に特化したアプリケーションの提供や、パートナーとの協力による専用サービスの提供だ。

まずはインターネットイニシアティブ(IIJ)との協業。学術情報ネットワーク(SINET)を提供するIIJと提携することで、Microsoft Azureを閉域ネットワークで利用できる。全国9つの通信キャリアと提携しているため、ワンストップサポートも実現している。

「この連携により、SINET利用顧客であれば、ネットワーク構成を変えることなく、Azureが利用できる。また、IIJのプライベートクラウドも合わせて利用できるため、ハイブリッドクラウド環境も簡単に構築できるようになる」(織田氏)

また、IIJだけではなく富士通エフ・アイ・ピーとも協業を行い、Microsoft Exchangeメッセージングサービスを総合行政ネットワーク(LGWAN)経由で提供する。LGWAN接続によるコミュニケーションサービスは日本で初めてのだといい、富士通エフ・アイ・ピーの高セキュリティデータセンター環境下で、自治体間のコミュニケーションが円滑に進むことが期待される。

ほかにも多くのパートナーとクラウド化支援策を展開するとのことで、「開発支援」と「移行支援」に分けて公共機関の支援を行う。目標は今後1年間でソリューションアプリ100個のクラウド化支援。織田氏はこれらの取り組みを通じて「公共のお客様に求められるナンバーワンのクラウドパートナーになりたい」と語った。