芝浦工業大学はこのほど、同大学 機械工学科の山西陽子准教授が、針を使わずに気泡の圧力で試薬や遺伝子までも体内に届けることが可能な「針なし注射器」の開発に成功した。

開発した「針なし注射器」 全長 約10cm 写真:芝浦工業大学

針なし注射器」の構造 穿孔最小径 約4μm 写真:芝浦工業大学

山西准教授は2012年に、液体中で電圧をかけることで高速発射されるマイクロレベル(1000分の1)の気泡の破壊力を用いて細胞を切開、試薬や遺伝子を輸送できる「マイクロバブルインジェクションメス」を開発し(特許第5526345号)、細胞への新しい遺伝子導入デバイスを提案している。

今回、このデバイスの構造を改良することで、空気中でも使用可能、直接皮膚に押し当てるだけで、注射技術の習熟度に関係なく、痛みを伴わずに高精度で試薬を目的の場所へ輸送することのできる新たな注射器を開発したという。

具体的には、これまで液中でしか使用することのできなかった従来のメスを、試薬が外へ漏れたり薄まったりすることなく、高い精度で十分な液量を輸送できるような構造に改良した。

また、メスを覆うガラス製のシェルの位置を前方に突き出すことで細胞とメスの気泡導入部の密着性を向上させ、高精度の位置制御を行うことで、空気中でも使用可能な「針なし注射器」の開発に成功したとのこと。

細胞の加工・試薬の導入の仕組み 資料:芝浦工業大学

山西准教授の「針なし注射」は、微細気泡の高速発射で指向性があるために、局部に精度の高い治療を可能とし、穿孔径は4μmとマイクロレベルで孔をあけることができるため、細胞へのダメージも少なくて済むという。