ITRは12月3日、同社が2014年10月15日から10月31日にかけて実施したアンケート調査結果をもとにまとめた、「国内IT投資動向調査2015」の概要を発表した。正式なレポートは、12月中旬に発刊(定価:税別12万8,000円)される予定。
この調査は、ITRの顧客企業や主催セミナーへの出席者、ならびにWeb調査の独自パネルメンバーのうち、国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する役職者3,500人に対して、アンケート用紙による記入もしくはWeb経由で回答を受けつけたもので、1,095人から有効回答を得た。
ITR 代表取締役/プリンシパル・アナリスト 内山悟志氏は、冒頭、「『国内IT投資動向調査』は今回で14回目となるが、定点観測していると、経年変化がみられる。最近はクラウド、モバイルという波が来ており、デジタル化された情報が企業のビジネスを変革させる時代になって来ている」と挨拶した。
レポートの詳細は、ITR シニア・アナリスト 舘野真人氏が説明。同氏によると、今回の調査では、「IT投資は再び低成長に」、「投資目的は攻めよりリスク対策」、「守り役、手配師に徹するIT部門に将来はない」、「2015年の成長分野はモバイルとネットワーク」という4つのトピックが得られたという。
「IT投資は再び低成長に」
投資動向については、2014年度のIT予算は、増額と回答した企業の割合が23.1%にとどまり、2013年度(31.7%)を大きく下回った一方、減額と回答した企業の割合も前年度を下回り、その分「横ばい」とする企業が65%強を占める結果となったという。これについて舘野氏は、「企業は保守的で、様子見の状態だ」分析した。
ただ、回答者の65%は景気はまあまあで好調だと認識しているという。回答者の多くが好景気だと認識しているのに、IT投資が消極的な理由について、内山氏は「経営者の意識によるところが大きいが、企業ITの位置づけが、ほとんど上がっておらず、欧米や新興国に比べ、重要性が低く見られている。ビジネスの好調の一躍を担っているのはITではないという認識がある」と解説した。
一方、海外投資については着実に進んでいるという。これまでは製造業が中心だったが、最近は業種に関係なく中堅・中小企業の海外進出の意欲が旺盛で、準備段階にあったり、検討している企業が多いという。海外進出に積極的な企業は、IT投資にも積極的になっており、投資対象は、情報セキュリティ、災害対策、IT内部統制など、リスク対策費用が増えているという。投資対象国は、中国が減り、他のアジア地域、とくにインドが増えているという。
投資目的は攻めよりリスク対策
戦略投資比率は2013年より若干増えているが、定常業務(守り)に予算を割いており、戦略的投資に回す予算がないという企業が多いという。ただ、成長企業は増やす傾向にあるという。
守りに対する投資では、業務効率アップ・コスト削減、社会的責任、ITインフラ整備・強化が多く、攻めに該当する項目では、事業・業務改革、経営情報の可視化、新規ビジネスモデル実現が多いという。
重視するキーワードと重点施策は、売り上げ増大への直接的な貢献、業務コスト削減、顧客サービスの質的向上、ITコストの削減、システム性能や信頼性の向上という、トップ5は前年と一緒で、重要度では、IT基盤の統合・再構築が昨年同様トップだが、クラウドへの移行の重要度が高まる傾向があるという。
守り役、手配師に徹するIT部門に将来はない。
今回は、IT部門の存続に対する危機意識といった新たな質問を設けている。IT部門の「現在の役割」と「3~5年後に担うべき役割」をそれぞれ問うたところ、システム運用やコスト管理といった「従来型機能」は、今後に向けて役割が大きく縮小するとの見方が示され、拡大する役割としては「ビジネスモデルの開発・改良」「ビジネス・イノベーションの促進」といった、ビジネス戦略と深く関わるテーマがあげられているという。そのため、従来型機能の提供に甘んじるIT部門は、今後急速に活躍の場を失うことが懸念されるという。
舘野氏によれば、IT予算の裁量権については、予算全体の50%以上を決済権をもっている企業が減り、全体的に、IT部門の決定権が弱まりつつあると指摘した。
製品/サービスの投資動向では、
2015年度に注目されるアプリケーション分野は、製造業では生産管理、サプライチェーン管理、建設では独自開発、社内セルフサービス・ワークフロー、流通・小売。商社はeコマース、経営管理、マーケティング支援・管理、金融・保険ではエンタープライズコンテンツ管理、マーケティング支援・管理、情報通信では営業支援・顧客管理、販売管理、公共・その他では財務会計となっている。
2015年度に注目されるテクノロジーでは、タブレット、スマートフォンのモバイルデバイスのほか、無線LANなどのネットワーク系も注目されているという。