東芝は12月1日、大学、病院臨床部門、製薬企業などの研究機関向けに、日本人ゲノム解析ツール「ジャポニカアレイ」を用いたゲノム解析サービスを開始すると発表した。
従来、次世代シーケンサを用いて約30億塩基のゲノム構造を解析する場合、解析に1か月以上掛かっていたのに加え、スーパーコンピュータの使用や、データ解析を行う専門の研究者などのインフラが必要なため、1人当たり50万円以上の解析費用が必要で、大規模なサンプルの解析を行うには莫大な時間と費用がかかっていた。
今回発表の「ジャポニカアレイ」を用いたゲノム解析サービスは、同社のライフサイエンス解析センターにて、研究機関から送付された血液、唾液、DNA検体などから個人のゲノム構造を解析するサービスである。日本人に特徴的な遺伝情報を短時間で解読可能な「ジャポニカアレイ」を活用することで、解析に約1週間、1人当たり1万9800円(税抜き)でゲノム解析を実現するという。これにより、疾病や習性などと遺伝子の因果関係を解明する研究機関向けに解析結果を提供することで、個別化予防、個別化医療の実現を加速させるとともに、この分野における日本の国際競争力向上に貢献していくとしている。
この「ジャポニカアレイ」は、東北大学 東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)が構築した「全ゲノムリファレンスパネル」を基に、COI東北拠点(東北大学革新的イノベーション研究機構)が社会実装した日本人ゲノム解析ツールであり、日本人に特徴的な塩基配列を持つ約67万5000か所の一塩基多型(SNP:スニップ)を1枚のチップに搭載しており、短時間で日本人のゲノム構造を解析できる。そして、その解析結果から約30億塩基の全ゲノム構造を疑似的に再構成(インピュテーション)可能な設計となっている。
今後、東北大学、弘前大学、新潟大学が同サービスを利用する予定となっており、研究拠点や製薬会社での採用も目指すという。東芝では、COI東北拠点と継続して、異なる民族のそれぞれ特徴的な塩基を見出していくことで「エスニックアレイ」を開発するなど積極的に事業を展開していくとコメントしている。