東京工業大学(東工大)はこのほど、ゴムのように伸び縮みする酸化物ガラスの作製に成功したと発表した。
同成果は同大学旭硝子共同研究講座の稲葉誠二 特任助教(現旭硝子)と伊藤節郎 特任教授(元旭硝子)、応用セラミックス研究所の細野秀雄 教授らの研究グループによるもの。12月1日(現地時間)発行の科学誌「Nature Materials」オンライン版に掲載された。
今回、同研究チームは複数種のアルカリ金属イオンを含むメタリン酸塩ガラスが、液体がガラスになるガラス転移温度近傍で、ゴム状物質に特徴的なエントロピー弾性を示すことを発見し、実現した。
エントロピー弾性とは、外力によって規則的に配列した分子が元の不規則な状態へ戻ろうとする性質のこと。ゴム、シリコーン、ポリウレタンなどで確認されている。今回、作製したガラスは高温で引き伸ばすなどの処理を加えると、エントロピー弾性に特徴的な吸熱を伴いながら、数十%もの収縮を生じ、元の状態へ戻ることが確認されたという。
室温では硬く割れやすい酸化物ガラスも、構造を工夫することで高温でゴムのように伸び縮みすることが示されたことによって、有機高分子のゴムでは対応できない高温下や酸化性環境などでの応用が期待される。