愛知県丹羽郡大口町にある「さくら荘」は、医療法人 医仁会が運営する老人保健施設で、明治時代のイメージを取り入れた建物だ。老人保健施設は病気や障害の症状が安定し、病気での治療や入院の必要はないが家庭で過ごすには少し不安な心身の状態の人、また介護やリハビリテーション、身の回りの世話などを必要としている人が利用する施設で、医師・看護師・介護職員・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)・管理栄養士・介護支援専門員(ケアマネジャー)・支援相談員などが関わっている。

「さくら荘」。内部は明治時代のイメージを取り入れている

同施設の定員は一般棟89床、認知症専門棟29床の計118名で、40室の居室のほか、食堂(レクリエーションルーム兼用)、診察室、特殊浴などを備える。敷地内には、同じ医仁会が運営するさくら総合病院があり、こちらの医師や看護士もサポートする。そんなさくら荘が3階建て建物内の各フロアーに無線LANを導入する検討を始めたのは、今年の4月のことだ

さくら荘に隣接するさくら総合病院

「ライフタイム保証」が決め手

同施設では、これまで入居者の状態の記録は紙ベースで行っていたが、これを電子化するにあたって、無線LAN環境が必要になったのだ。データを入力する機器はiPad。入力するデータは、入居者の日々の体温、呼吸数、血圧などのバイタル情報やカルテの代わりとなる情報だ。利用するiPadの台数は15台ほどで、これを複数のスタッフで共用利用する

iPad導入はもともとさくら総合病院が先行して実施していたが、利便性が高いということで、さくら荘にも導入されることになったのだ。さくら病院が導入したiPadの台数は250台という大規模なものだ。

さくら総合病院 情報部 課長 下端一弘氏

さくら総合病院 情報部 課長 下端一弘氏は、「ナースステーションに戻ってデータを入力するのではなく、ベットサイドで入力したいというニーズがあり、無線環境が絶対必要でした」と、無線LANを導入するに至った背景を説明する。

導入にあたっては複数のベンダーの製品を検討し、最終的にネットギアの製品を採用した。具体的には、ワイヤレスLANアクセスポイント「WNDAP360」×19台、ワイヤレスLANコントローラー「WC7520」×1台、ギガビットスマートスイッチ「GS510TP」×3台だ。

アクセスポイント(AP)はPoEによってスイッチからLANケーブルを通して電源供給されている。設定も含めて無線LANの工事は2-3日で完了。実運用が開始されたのは今年の6月末だという。

施設内に設置された無線LANアクセスポイント「WNDAP360」(左)とスイッチ「GS510TP」およびワイヤレスLANコントローラー「WC7520」(右)

下端氏は、ネットギア製品を採用した理由を次のように説明する。

「決め手は製品価格の安さとライフタイム保証によって保守費用がかからない点です。ネットワーク機器では、保守費用が非常に大きくなります。しかし、ネットギアさんの製品では故障の場合でも無償で交換していただけるので、ほとんど必要ありません。他社さんと比較すると、今回の規模であれば年間100万円程度の削減になるのではないでしょうか。また、これまで他社製品を使って部分的に無線LANを導入していましたが、通信が安定しませんでした。今回、ネットギアさんの製品を導入して2カ月ほど経ちましたが、トラブルはまったくなく、導入時のまま使っています」

トーテックアメニティ ネットワークソリューション事業部 第1システム部の岩谷真司氏

ネットギアの「ライフタイム保証」とは、ユーザーが対象製品を持っている間、期間を定めずハードウェア故障に対する保証を提供する無償製品保証のことだ。

今回、無線LANの導入作業を行ったトーテックアメニティ ネットワークソリューション事業部 第1システム部の岩谷真司氏は、「さくら荘(さくら総合病院)様のように、今後も医療現場のネットワークシステム無線化が進むことを想定し、導入のし易さ、運用のし易さ、将来的な拡張性を考慮し一括管理機能を備えた無線環境をご提案しました。ネットギアさんの製品は、さまざまな無線規格に対応し、PoE機能での無線APへの給電も可能であったため、さくら荘様の運用にあった製品だと感じました。ネットワーク製品もそうですが、最近のITインフラは価格勝負の面があります。ネットギアさんの製品は、性能の割に安価で、機器にはライフタイム保障が付いているため、運用のトータルコストを抑えられ、お客様に提案する際の訴求ポイントは大きいと思います。また、仕様もエンタープライズ用になっていますので、安定が求められる病院にも提案できます」と続ける。

さくら荘に導入された無線LANアクセスポイント「WNDAP360」、スイッチ「GS510TP」、ワイヤレスLANコントローラー「WC7520」のネットワーク構成

APコントローラーの導入で管理負担を低減

無線LANを導入する場合、APコントローラーを導入しないケースもあるが、さくら荘では、APコントローラーを導入し、APを一括管理している。

その理由について下端氏は、「APコントローラーは絶対必要ですね。APコントローラーを導入すると、APを1つ1つ設定しなくても、1カ所だけ変更すれば、それがすべてに反映されその効果は大きいと思います。圧倒的に管理コストが下がります。特に、MACアドレスで端末を制限するときのコスト削減効果は大きいと思います。利用する端末が変更されるたびにすべてのAPの設定を変えるのは、非常に手間がかかると思います」と説明した。

iPadは看護士だけでなく、事務所の人が入居者の基本情報や家族との面談記録用に利用しているほか、ケアマネージャーも日々の食事量や排せつ状況を入力している。

また、iPadからはさくら総合病院に保存されているカルテ情報も参照可能だ。これは、地域の中核病院と、患者に身近にあるかかりつけ医院とで連携して医療を行うために構築したシステムを利用している。

下端氏は無線LANの導入効果について、「システムが円滑に回るようになりました、また、入力場所の制限もなくなり、作業効率が上がっています」と語る。

9月1日からは、飛行機内での電子機器の利用が緩和されたが、病院内での電子機器の利用も緩和されつつあり、今後、医療機関でのネットワーク化はさらに進んでいくだろう。

下端氏も、「最近は医療機器もほとんどネットワーク対応になっており、移動式のレントゲン機器なども、撮影した写真を離れた場所で見ることができるようになっています。そういう意味で、病院のネットワーク化は今後もどんどん進むと思います」と語る。

医仁会が運営する施設には有料老人ホームもあり、今後はこちらに無線LAN環境も整備する予定だという。

今回のケースで使用した主な製品

ワイヤレスLANコントローラー「WC7520」。製品ページはこちら

デュアルバンド ワイヤレスLANアクセスポイント「WNDAP360」。製品ページはこちら

PoE対応ギガビット10ポート スマートスイッチ「GS510TP」。製品ページはこちら