2014年12月2日、東京都千代田区のパレスサイドビルで開催される「実践型ビジネスプロセス改革セミナー~キーパーソンが語る、業務改善の手法とIT活用~」では、業界のキーパーソンを講師に招き、ビジネスニーズの変化にすばやく対応するために欠かせないBPM(業務プロセス管理)の実施にあたって、現在多くの企業が抱える課題やその解決策、BPMの具体的手法などを紹介する。

同セミナーで基調講演のステージに立つのは、三菱商事RtMジャパン株式会社 CIO 情報システム室長 大三川越朗氏。BPMという用語すらなかった頃から、数々の現場で業務プロセスの可視化と改善に取り組んできた、いわばBPMのエキスパートだ。氏が実体験から導き出したBPM成功の秘訣は、聞き逃せないものとなるだろう。本稿では講演に先立ち、その内容の一部を紹介する。

業務の継続に重要なのは、ノウハウの継承

三菱商事RtMジャパン株式会社 CIO 情報システム室長 大三川 越朗 氏

大三川氏が三菱商事に入社したのは1977年。担当することになった鉄鋼国内営業部門では、すでに受発注・納品・代金回収などの管理にコンピュータが利用されていた。現在のようなネットワークやEDIシステムこそなかったが、データの多くは磁気テープでやりとりされ、事務には極力人材を割かない体制が整えられていたという。

1990年からは大三川氏は某支店に赴任し、大手造船所を担当。翌年から5年間はフル操業という第二次造船ブームの中、従来の業務改善経験を活かしてシステムの構築を図り、事務処理業務の効率化を実現した。その後1996年に東京に転勤しIT関連の業務に就いたが、2004年に三菱商事SI子会社出向中にかつて勤務していた支店の取り扱いが急増し、残業が増えシステム化を検討したいとの相談をうけることになった。しかし、話をよく聞くと約8年の間に大三川氏在勤当時のスタッフの多くが転勤や退職で職場を離れてしまい、構成人員の多くが変わってしまっていた。また、その前の数年間は取扱量が少なく、支店の情報システムが持つさまざまな機能を使う必要が無かった時期が続いたために、ノウハウが適切に引き継がれていないことが判った。システムを効果的に利用することができなくなり、結果として膨大な残業時間が発生してしまっていたのだ。

業務プロセスの可視化で生まれる、数々のメリット

その時は業務プロセスの可視化支援と情報システムの本来の使い方を伝えることで事なきを得たが、「少ない人数で相当量の仕事を回せる体制を構築したはずなのに、それが適切に引き継げる体制を自分が残していなかった」(大三川氏)ことに強いショックを受けると同時に、「他部署でも同様のことがあるのではないか。あるとしたら、それなりのサポートを行う部門がないと、今後ますます大変になる」と考え、所属していたSI子会社内に「ビジネスプロセス・エンジニアリング・サービス部」を起ち上げた。

現場インタビューを行って議論が可能な粒度まで落とした業務プロセスをフローチャートで可視化し、それを共有できるようにすることで、たとえ担当社員が変わっても、それまでと同様の仕事を同様の業務品質で継続して行えるようにサポートするのが、この部門の役割だ。また業務プロセスを可視化することで、その中にある課題も見えてくるため、業界改善も進められる。改善後の業務プロセスが合理的に設計されていれば、システム化する際の開発コストや期間を圧縮することも可能だ。

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以上、大三川氏が業務改善に取り組むきっかけとなった一連の出来事をかいつまんで紹介したが、この時、氏が編み出したサービスの手法は、現在のBPM手法と重なるものであることが分かる。自身の置かれた状況下で、氏自ら切り拓き、創出してきた業務プロセス改善手法とその事例はまだまだ続くが、ここから先はぜひセミナーに来場して、大三川氏本人が語る重みのある言葉でお聞きになっていただきたい。会社統合における新業務プロセスの設計やそのプロセスを支えるためのシステムの改善など、ごく最近の事例も採り上げられるということなので、BPMの活用事例を知りたいという方にもお勧めしたい。