2014年12月3日、セミナー「ビッグデータセミナー~ビッグデータ競争社会の到来! 経営に活かす戦略分析とは!?」が開催される。当日は、日本アイ・ビー・エム アドバンスト・テクノロジー・センター システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト 石井 旬氏が登壇し、ビッグデータ活用に関するセッションを行う予定だ。そこで講演に先立って、企業が既に所有しているデータを活用し、よりダイレクトにビジネス向上に役立つアプローチについて、同氏に聞いた。

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老舗国内メーカーは、いかにして見積りに対する受注率UPを実現したか

日本アイ・ビー・エム株式会社 システム製品事業本部 テクニカル・ソリューション システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト
石井 旬氏

「ビッグデータ活用の動きが進んだことで、多くの企業が基幹システムのデータの価値に気付き始めています」──開口一番、石井氏はこう語った。

実際、幾つかの調査会社レポートよると、「ビジネスに効くデータの種類は?」という問いに対して最も多かった回答が「トランザクション(基幹システムのデータ)」という結果がある。ビッグデータと聞いてイメージしやすいWebログやソーシャルメディア、マシン・センサなどのデータはいずれも2位以下となっている。

石井氏は次のように分析する。「SNSやWebログなどを分析して例えば製品の評判や売上パターンなどを知ろうとした場合、途中から必ず基幹システムのデータとの照合が必要になります。なので、具体的にビッグデータ活用に乗り出している企業ほど、取り組みの中でその重要性を認識するようになったのでしょう」

一足先に、身近なデータから価値を引き出して、業績向上に役立てることに成功している事例を石井氏は紹介してくれた。それは、歴史ある機械要素部品メーカーによる、ビッグデータを活用した受注率アップの仕組み──「受注レシピ」の取り組みだ。

同社は、コンタクトセンター業務で利用しているSugarCRMに蓄積された受注記録などと、販売・生産等の基幹システムのデータを有効活用することで、ビジネスを更に伸ばすことを検討。その結果、自社が有するビッグデータを集めて受注率を高めるための7つの「受注レシピ」を編み出したのだった。

7つの受注レシピのうち3つを例に挙げると以下のようなものだ。 1 過去の受注内容からデータ検索を行い似た見積りを見つけ出す「類似見積りの発見」 2 受注に至った出荷データを確認する「過去の出荷状況確認」 3 繰り返し注文が舞い込み売上に貢献している商品を発見する「『売れ筋』の発見」

こうして見積り依頼一件に対してダッシュボード上に受注レシピを示すようにした結果、コンタクトセンターではオペレーターが最適な見積り対応を迅速に行えるようになった。例えば類似見積りの発見により、似通った受注につながった過去の見積り書をクリックするだけで新たな有効確度の高い見積り書が瞬時に作れるようになっているのだ。

この「受注レシピ」を支えているのが、「SugarCRM」とBIツール「IBM Cognos」、インメモリDBの「IBM DB2 BLU」に、高速で堅牢なビッグデータ処理を可能にするインフラとして「IBM Power Systems」を組み合わせたデータ分析基盤だ。

「従来であれば、基幹システムとコンタクトセンターの2つのシステムを人間が見て考える必要がありましたが、受注レシピはボタンひとつで類似や成功のパターンを自動抽出できるため、見積依頼をキーにベストプラクティスが自動で探し出せるのです」(石井氏)

この「受注レシピ」の導入により、同社では受注率の一定量の向上を実現している。時間を遡ってみると、このプロジェクトを実施するに当たり、経営陣からは次の3つの注文が出された。

  1. 見積もり業務の効率化
  2. 顧客満足度の向上
  3. 将来の柱になるような主力製品の育成

このうち1と2は既に達成しているが、現在開発を進めている最中なのが3を実現するシステムだ。このシステムではまず、過去の見積もりや受注の記録のうち、主力製品になる可能性があるものを、ノウハウを持った経営者や担当者が定期的にチェック形式で選定する。次に、そのチェックした見積もりや受注の様々な情報をキーに「IBM SPSS」にかけて、前年実績や製品傾向、クレーム傾向、日報傾向、日報キーワードなど、他のシステムのデータを合わせてデータマイニングやテキストマイニングによる分析を行いレポート。これにより主力製品候補として選定した案件の可能性や育成状況を確認する。更にこれらの情報を主力製品候補抽出フィルターにセットし、そのフィルターにより自動抽出された案件を、再度人間がチェック。こうして主力製品を育成していくサイクルを構築するのである。合わせて定期的に主力製品の案件状況を確認し、次の主力製品が何になるかの見極めも実施することになる。

「つまり、受注レシピシステムに、新たにSPSSによって主力製品を育成する機能をつくっているのです」

同社の取り組みからわかることは、次の3点だ。

  1. 身近なデータを使って価値を引き出す
  2. テクノロジーで徹底的な差別化を考える
  3. 経営戦略とデータ活用をトータルで考える

「同社の事例は、特に製造業には共通するシナリオだと言えるでしょう。ただし、同じように実現するためには企業としてのナレッジが必要になります。自社の強みやビジネスのコアを見つめなおして、それらを可視化や実装できるようにルール化をしないと、単に使えないリストだらけのシステムとなってしまうことでしょう。分析検証して本当に主力商品になる可能性がある取引だったかどうかが見えてくるのも、最初に受注レシピによる可視化があってこそです。ただ、そこまで実現するのは難しくても、やはり可視化は必要です。データ分析には、可視化→予測→最適化のステップがあるので、まずは可視化のステップに取り組んでみてはいかがでしょうか」

分析力を武器とする企業となるための具体的な手順、そして同社の事例の詳細については、石井氏の講演で語られる予定だ。まず自社で取り組める、そして取り組めるビッグデータ活用の第一歩を踏み出すためにも、ぜひぜひ来場し、石井氏のセッションに耳を傾けてほしい。

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