分子科学研究所(IMS)は11月18日、有機半導体に不純物を極微量加えるドーピングの効率を100%にすることに成功したと発表した。
同成果は、IMSの平本昌宏教授、新村祐介CREST研究員らによるもの。科学技術振興機構(JST)のCREST(研究領域名「太陽光を利用した独創的クリーンエネルギー生成技術の創出」)の一環として行われた。詳細は、米国物理学協会の応用物理学誌「Applied Physics Letters」のオンライン版に掲載された。
シリコンに代表される無機半導体は、ドーピングによって自由自在にn型化、p型化することができ、その際、加えた不純物の個数に対する発生した電子の個数、すなわち、ドーピング効率は100%であることが知られている。一方、有機半導体のドーピング効率は10%以下で、仮に不純物を10個加えても、そのうちの1個にしか電子を発生させることができなかった。
研究グループは、典型的な有機半導体として、フラーレン(C60)と無金属フタロシアニン(H2Pc)から成る共蒸着膜(C60:H2Pc)に、ドナー性ドーパント分子(Cs2CO3)をドーピングした系について、ケルビンバンドマッピング法によって発生した電子数を測定した。すると、H2Pcの単独膜や、C60の単独膜の約10%に比べて、C60:H2Pc共蒸着膜(比率1:1)は約50%まで増大した。さらに、共蒸着膜中でのH2Pcの比率を増やしたところ、その比率が99%に達するまでドーピング効率は増え続け、97%に達したという。このように、共蒸着膜にドーピングすることでドーピング効率が増大する"ドーピング増感効果"が起こっていることが発見した。これは、有機半導体においても、加えた不純物10個のすべてが電子を発生し、無機半導体と同じ効率100%でドーピングができるようになったことを意味している。この"ドーピング増感効果"は、高性能の有機太陽電池や有機デバイス作製の基盤となる技術であるとコメントしている。