東北大学は10月19日、ガスアトマイズ法を用いて、磁化されやすい軟磁性の特性をもつコバルト鉄系アモルファス合金(金属ガラス)から、直径がナノメートルスケールのナノワイヤを安価に生産し、これを用いてプロトタイプの磁気センサ素子を作製することに成功したと発表した。
同成果は、同大 原子分子材料科学高等研究機構の中山幸仁准教授らによるもの。同大 金属材料研究所の横山嘉彦准教授、東北学院大学の薮上信教授らと共同で行われた。詳細は、米国物理協会誌「Applied Physics Letters」に掲載された。
コバルト鉄系アモルファス合金は、優れた軟磁性特性を持つことが報告されている。これまでのコバルト鉄系アモルファス合金のワイヤ作製法では、直径は20~30μm程度が限界だったが、今回の研究では、独自のガスアトマイズ法を用いることにより、直径が100nm~3μm程度の長尺なワイヤの作製に成功した。さらに、作製したワイヤを、集束イオンビーム法を用いて電極上へ固定し、プロトタイプの磁気センサ素子を作製した。このデバイスを用いて、外部磁場を変化させながら、ワイヤのインピーダンスを計測したところ、外部磁場に応じてインピーダンスが変化することが分かった。さらに、インピーダンスのピーク位置も周波数に応じて変化することが観測された。このピーク位置の周波数依存性は強磁性共鳴と呼ばれている。また、インピーダンス変化はGHz領域においても計測されており、従来の周波数特性と比較すると、1000倍以上の応答速度が得られることを示しているという。
今後は、さらに高い磁気検出能が得られるような合金の探索や、その探索された合金のナノワイヤ化を進めるとともに、磁気マッピングが得られるよう素子の高密度化を試みるという。また、生体磁気計測を視野に入れた研究を進める。これが実現すれば安価な心磁、脳磁計測機器の発展が期待できるとコメントしている。