STMicroelectronicsは11月19日、新たに認定された表面マイクロマシニングプロセス「THELMA60(60μm Thick Epi-poly Layer for Micro-gyroscopes and Accelerometers)」によるMEMSセンサの製造を開始したと発表した。
これまで半導体メーカーは、加速度センサ、ジャイロセンサ、MEMSマイクロフォン、圧力センサといった3次元MEMS製品の量産に、精密な制御ができる表面マイクロマシニングとバルクマイクロマシニングという2種類の製造プロセスを使用してきた。表面マイクロマシニングはコスト効率に優れており、もう一方のバルクマイクロマシニングは高い感度と精度が求められる場合に選択されてきた。今回発表された「THELMA60」は両プロセスの優位性を組み合わせたもので、新たな市場や応用分野におけるMEMSセンサの可能性を広げるとしている。
表面マイクロマシニングは、シリコンウェハ表面上に成長させた厚い結晶層(エピタキシャルまたはエピ)に構造体を形成する。通常、最大で25μm厚のこの層に対して、成膜、エッチング、フォトマスク形成などの加工を行い、MEMSセンサ内に可動構造体(可動マス)を形成する。この可動マスのサイズが製品の感度に関係する。卓越した製造効率で低コスト化を実現する表面マイクロマシニングは、コンスーマ機器、携帯型機器、IoT機器向けのMEMSセンサに最適となっている。また、バルクマイクロマシニングは、シリコン基板に直接微細構造を形成するため、可動マスが大きくなり、その感度と精度も向上する。ただし、感度の向上に伴い、コストも増加するため、医療、航空宇宙、車載機器といったハイエンド分野を対象としている。
これらに対し、「THELMA60」はエピタキシャル層を60μmまで厚くすることにより、従来はバルクマイクロマシニングで実現していた高い感度を表面マイクロマシニングで可能にしたとしている。