熊本大学は11月14日、進行性の頭頸部がん患者に対して、がん細胞に特有に発現するがん抗原ペプチドをワクチンとして投与する研究を実施したところ、がん患者に癌細胞を攻撃する免疫反応の増強を誘導することができ、患者の生存期間を延長することができたと発表した。

同成果は同大学大学院生命科学研究部 歯科口腔外科学分野の篠原正徳 前教授(現名誉教授)、吉武義泰 前助教(現非常勤医師)、中山秀樹 講師、平木昭光 講師、福間大喜 特任助教、湯野晃 医員、同大学生命科学研究部 免疫識別学分野の西村泰治 教授、シカゴ大学医学部(前東京大学医科学研究所・ヒトゲノム解析センター長)の中村祐輔 教授らの共同臨床研究によるもの。同成果は11月12日付け(現地時間)の米学術雑誌で「Clinical Cancer Research」のオンライン版に掲載された。

篠原前教授、西村教授と中村教授は、頭頸部がんのペプチドワクチン療法について、13年間共同研究を続けており、がん細胞を殺す免疫細胞「キラーT細胞」を活性化する、3種類の異なるがん抗原が分解されて出来るペプチドを同定することに成功。このペプチドを「HLA-A24」を持っているがん患者にワクチンとして投与すると、体内で樹状細胞などの抗原提示細胞の表面に発現する「HLA-A24」に結合して、がん細胞表面の「HLA-A24」とがん抗原ペプチドを認識し、がん細胞を殺すキラーT細胞を誘導することでがんを治療できると考えていた。

がん抗原ペプチドワクチンががん治療に効果を発揮する仕組み

今回、同研究グループは、他に治療法がないと宣告された、進行性の頭頸部扁平上皮がん患者(主に口腔がん患者)37名に対して、がん抗原ペプチドのワクチン療法を施行。その結果、患者の体内にがん抗原ペプチドを認識して、がん細胞を殺すキラーT細胞の増加を認め、一部の患者で生存期間の延長が観察されたという。

がん抗原ペプチドを投与したがん患者と、投与できなかった患者における生存期間の比較

同研究成果は、がん抗原ペプチドを用いた新しいがん治療法の発展につながることが期待される。