理化学研究所(理研)は、真空の屈折率1.0よりも低い屈折率0.35を実現した3次元メタマテリアルの作製に成功したと発表した。
同成果は、同所 田中メタマテリアル研究室の田中拓男准主任研究員、国立台湾大学の蔡定平教授(当時 台湾ITRC 所長を兼務)らによるもの。詳細は、ドイツの科学雑誌「Advanced Optical Materials」のオンライン版に掲載された。
メタマテリアルは、光を含む電磁波に応答するマイクロメートルからナノメートルスケールの共振器アンテナ素子を大量に集積化した人工物質で、共振器アンテナ素子をうまく設計することにより、物質の光学特性を人工的に操作できるという特性を持っている。しかし、これまで報告されているメタマテリアルのほとんどは、その共振器構造の2次元的な平面パターンを基板表面に加工したものだったため、ある特定の入射方向の光のみにしかメタマテリアルの特性を示さなかった。
今回、研究グループが開発したメタマテリアルは共振器アンテナ素子を3次元的に加工し、基板に垂直な方向に対して縦、横、斜め方向と立体的に配置したため、メタマテリアルに垂直な軸周りのどの方向からの光に対してもメタマテリアルの特性を発揮できるという。研究グループでは、このような等方性を持つ3次元メタマテリアルを数mm角のサイズで実現したことも今回の大きな成果であるとしている。
さらに、この作製したメタマテリアルの光学特性を測定した結果、32.8THzの光に対して0.35という真空よりも低い屈折率を持つことを確認した。このような物質は自然界には存在せず、極微細構造を用いて人工的に作り出して初めて実現できる物質であるという。そして、真空よりも屈折率が低いメタマテリアルは、高速光通信や透明化技術(透明マントなどの光学迷彩)、光学顕微鏡の限界を超える超分解能レンズ(スーパーレンズ)などに応用できる可能性があるとコメントしている。