Analog Devices(ADI)は10月30日、低消費電力アプリケーション向けに信号計測感度を改善する設定可能アナログフィルタを搭載した同期式復調器「ADA2200」を発表した。

同製品は、ADIが2011年に買収したLyric Semiconductorで開発された特許出願中の標本化アナログ技術「SAT」を用いた設定可能アナログフィルタを搭載している。これにより、携帯型測定機器のバッテリ寿命を最大化し、大きな信号源の環境下でもアナログ信号や位相の高精度な測定を行うことができる。また、既存の個別素子による構築と比べて、PCB面積を最大25%削減できる。さらに、システム設計と最適化のための時間を短縮し、多数のセンサや製品、プラットフォームまで回路設計の再利用を可能にする。

具体的には、設定可能無限インパルス応答(IIR)フィルタ、ローパス有限インパルス応答(FIR)1/8xデシメーションフィルタ、0/90度位相検出付きミキサ、リファレンスクロック、およびA/Dコンバータ(ADC)ドライバ出力を含む高集積のアナログシグナルチェーンが特徴となっている。加えて、-40℃～+85℃の温度範囲で動作し、最高1MHzの入力サンプリング速度まで最適化され、かつ信号入力帯域幅30kHzまでの復調ができ、0.009度の位相検出感度を実現している。

そして、「SAT」技術は、キャパシタ間でのチャージシェアリングを用いて、アナログドメインで"デジタルライク"な演算を実行する。また、アナログ入力・標本化アナログ出力を備えており、信号を完全にアナログ領域で処理することでADCのサンプルレートを低減する。その結果、ADCの消費電力を最大87%削減し、デジタルプロセッサやマイコンから計算負担の大きなタスクを外す。そのため、システムアーキテクチャの簡素化、開発時間の短縮、システムサイズの縮小、消費電力の低減を図れるようになる。

これらにより、医療、産業、そして通信市場で用いられている先進的なバッテリ駆動の低電圧システム向けに最適であるという。この他、インピーダンス測定、ガス検出、大気/流体分析、歪ゲージ、近接度測定などといったさまざまなアプリケーションに用いることができる。

なお、パッケージは16ピンTSSOP。価格は1000個受注時で2.95ドル。すでに量産出荷を開始している。

低消費電力アプリケーション向けに信号計測感度を改善する設定可能アナログフィルタを搭載した同期式復調器「ADA2200」