個人間取引(C2C)市場が盛り上がっていることは、ご存知だろうか? 例えば、飛ぶ鳥を落とす勢いのLINEがC2Cプラットフォームアプリ「LINE MALL」を昨年末にリリースし、ほかにもフリマアプリ「メルカリ」や「Fril(フリル)」が存在する。10月31日に初のテレビCMを放映するFablicのオフィスを訪問することができたので、その様子をお伝えしよう。
フリルはこの10月に200万ダウンロードを突破。20代前半の女性を中心に高級ブランドの中古品、新古品の取引が盛んなプラットフォームだ。ユーザーがフリルを利用するためには、運転免許証などの個人情報を確認できる書類が必要であり、ユーザーも女性に限定しているため、「安全で安心できる」ことにフォーカスされている。
もちろん、個人情報がプラットフォーマーに明かされていても、トラブルが起きないということはない。数十万人以上が常時利用するサービスであり、個人間の取引である以上、マナーなどのトラブルはつきものだという。フリルでもそうした問題を解消すべく、マナー教室と呼ばれるメルマガを1週間に1回配信しており、ユーザーが自制する形での秩序を保てるよう配慮している。
それでも悪質なユーザーはなくならない。フリルで出品を行なう場合、商品の"リアル"な状態を相手に伝えるよう、現品写真を自分で撮影してあげるようユーザーに推奨しているが、1日に出品される数万件のアイテムのうち、1000~2000件は他社サイトなどから拾ってきた画像の使い回しが存在するという。画像の使い回しが明らかな商品については、ユーザーがフリル側に通報できる仕組みとなっている。
では、フリルはどのようにその通報を処理しているのか。
実はフリルでは、カスタマーサポートを外注することなく、全て自社内、しかもエンジニアの隣でサポート要員が対応している。これらのサポート要員は、過去にユーザーインタビューなどでフリル側と接点のあった「フリルユーザー」を登用しており、現在35名程度でシフトを回して365日体制でサポートを行なっている(24時間ではない)。ユーザーの登用にはメリットがあるようで、「使い慣れている人だからこそ、利用者の気持ちがわかる。利用者の気持ちがわかるからこそ、十分なサポートがユーザーに対してできる」(Fablic広報担当者)という考えのもとにユーザー登用を行なっている。
また、エンジニアとカスタマーサポートを隣り合わせに配置することで、「お客様の言葉をエンジニアにすぐに届けられるメリットもある」のだという。これは、バグの処理だけではなく、新サービスができるまでにサポートで確認をしてもらい、ロンチするかどうか判断するという役割も担っているのだという。
こうした取り組みから多くの使い回し画像による投稿は削除され、悪質なユーザーについては投稿ができなくなるが、中には違法なものや偽ブランド品を販売しようとするユーザーも存在する。ただ、こちらについては個人情報をフリル側が押さえているため、警察と協力の上で排除することになるという。法に触れる案件は月に数件とのことだが、こうした取り組みも、大多数の善良なユーザーが被害に遭わないよう配慮したフリルのメリットといえる。
オフィスで違法出品(例ではぬいぐるみを利用)を行い、処理のフローをデモンストレーションした。ユーザーにはガイドライン違反である旨の通知が行なわれる。複数回警告を受けた場合はアカウント停止処置などが行なわれる |
新たな展開を続々と
Fablicは、8月からB2Cの「公式ショップ」サービスの提供を試験的に開始。30日19時からは初の常設店として「MERCURYDUO(マーキュリーデュオ)」と「dazzlin(ダズリン)」「EMODA(エモダ)」をオープンする。
C2Cモデルでその人気を伸ばしてきたフリルだが、何故リユースではないブランドショップの常設に至ったのか。
この点についてFablic 代表取締役の堀井 翔太氏は「ブランドからお声がけをいただいたが、ユーザーの声も後押しした」と話す。フリルのユーザーはアプリの利用が深まっていくケースが多く、ユーザー調査を行なっていく中で、「フリルで最初に商品を探して、もし見つからなかったらZOZOTOWNやマガシークへ商品を探しに行く」という声が見られるようになったのだという。
実は、フリルの中でもいわゆる使用済みの中古品よりも、新品未使用の新古品の割合が多く(約6割)、ある程度状態が良いものを求めてユーザーが集まっている状況でもあったのだという。そこで「新品が買えるし、中古も買えるという状況にしたかった」(堀井氏)とのことで、常設に至ったのだという。なお、8月からの試験販売ではブランドによっては5日間で100万円以上売れた店舗もあり、そうした結果も常設を後押ししたと見られる。
また、31日からはフリル初のテレビCMの放映も開始する。沢尻エリカさんやシシド・カフカさん、篠原ともえさん、田中美麗さんといったフジテレビ系「ファーストクラス」出演メンバーによるCMで、「大切にしていたけど着る機会が減ってしまったファッションアイテムを、共感してもらえる人に譲る」というフリルのイメージを表現したという。
これまでCMを打ってこなかったFablicだが、「CMを打ったメルカリの動向、ダウンロード数やユーザーのアプリ継続率、ゲームではないスマートフォンアプリがCMを打つのはどうなのかといったところを多角的に検証してCM放映にいたった」と堀井氏は話している。
CM放映にあたっては、直近で資金調達を行なった10億円のうち、半分以下の「数億円程度の予算に抑えた」(堀井氏)とのことで、「予想していたより上振れするかなと思っていたが、豪華な出演者の皆さまの割には予想通りに落ち着いた」と笑顔で語っていた。