農業生物資源研究所(生物研)、九州大学および名古屋大学は10月30日、イネにとって害虫であるトビイロウンカに対するイネの抵抗遺伝子を特定することに成功したと発表した。同成果は英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
トビイロウンカはイネの害虫の一つで、梅雨期に中国南東部などから日本に飛来して増殖し、甚大な被害をもたらしている。近年、殺虫剤が効きにくいトビイロウンカが出現したため、被害が深刻化しており、新たな薬剤、またはトビイロウンカに抵抗性を示すイネの品種開発が必要となっている。
また、国内で栽培されている一般的な日本型イネ品種は、トビイロウンカ抵抗性を持たず、抵抗性遺伝子をもつインドやスリランカなどの品種と交配して単一の抵抗性遺伝子を導入した栽培イネが育成され、東南アジアで利用されている。しかし、このイネにも害を与えるトビイロウンカが出現したため、さまざまな加害性を示すトビイロウンカに対応した抵抗遺伝子を持つイネ品種の開発が望まれている。
これまでの研究で、インドのイネ品種が持つ「BPH25」と「BPH26」という2つの遺伝子が同時に存在すると、現在問題となっている加害性バイオタイプのトビイロウンカにも抵抗性を示すことがわかっている。今回の研究で、「BPH26」遺伝子を導入したイネでは、トビイロウンカが針のような口をイネの師管(栄養分を輸送する組織)まで挿入するものの、師管液を吸汁できず、餓死することが判明した。
研究チームは「BPH26」の染色体上の位置を特定し、育種に有用なDNAマーカーの開発にも成功。「BPH25」のDNAマーカーも作成されつつあり、これら2つの遺伝子の DNA マーカーを用いて、日本に飛来するトビイロウンカに対して幅広い抵抗性を示すイネの開発が、今後2~3年中に開始できる見込みだという。