ヴイエムウェアは10月29日、明治安田生命保険がヴイエムウェアのコンサルティング サービス「VMware Accelerate アドバイザリーサービス」を活用するとともに、「VMware vCloud Suite」を導入して、従業員の約3万7000人が利用するプライベートクラウド基盤「MYクラウド」を構築したことを発表した。

明治安田生命はすでに仮想基盤を構築していたが、「仮想化の統合率が十分に高められない」「トラブルシューティングに時間がかかる」などの理由から、コストの削減効果が限定的という課題を抱えていた。

ヴイエムウェア プロフェッショナルサービス本部 本部長 神戸利文氏

「VMware Accelerate アドバイザリーサービス」は、顧客の環境の測定・評価を行いIT 変革に向けた戦略を策定するとともに、ベンチマーク、財務モデル、実現可能なロードマップを提供する。

ヴイエムウェア プロフェッショナルサービス本部 本部長を務める神戸利文氏は、クラウドの発展のシナリオは「仮想化サイロ」「共通基盤化」「プライベート・クラウド活用」「Software-Defined Data Center完成」「ハイブリッド・クラウド活用」の5つの段階に分けることができると語る。

同社のビジネスから見たところ、まだ第1段階の「仮想化サイロ」にとどまっている企業が70%から80%に及び、第2段階の「共通基盤化」に達している企業は10%から15%程度で、第3段階の「プライベート・クラウド」を実現している企業は5%から10%程度にすぎないという。

実のところ、明治安田生命も第2ステップの「共通基盤化」にあり、次のステップであるプライベート・クラウド活用に進めるべく、ヴイエムウェアのサービスと製品を利用したというわけだ。

神戸氏は「これまで企業はプライベート・クラウドに対し、セキュリティとガバナンス、相互運用性に対する懸念を抱いていたが、ようやく利用しても大丈夫という安心感を得たようだ」と、ここにきて、企業が本腰を入れてプライベート・クラウド構築に乗り出している状況を明らかにした。

同サービスでは、インフラのロードマップを策定にするにあたり、「顧客の目標像に対する合意の取り付け」「TCOシミュレーション」「Cloud Readinessチェック」といったことを行う。

「Cloud Readinessチェック」では、独自のフレームワークを活用して、課題を整理する。今回は、ロードマップ策定をするとともに、同社の顧客サポートの経験をもとに整備すべきポリシーの要素を整理し、米国の事例をもとにプライベート・クラウド活用に必要なプロセスを組織のあり方を説明したという。神戸氏によると、明治安田生命のプロジェクトでは、アセスメントに2ヵ月、ルール構築に6ヵ月を費やしたそうだ。

「Cloud Readinessチェック」で利用されるフレームワークの例

プライベート・クラウドの高度化へのステップ

今回、5年間の試算を行ったところ、以下の効果が見込まれている。

  • サーバ仮想化比率を現在の57%から67%に向上、統合率を現在150%へ向上。これにより、年間の設備投資コストが3分の1に削減される見込み。

  • 2014年度までに23システム、785台のサーバをMYクラウドに仮想化して集約し、2017年度までに、さらに350サーバを集約する方針。

  • 視認性向上により、仮想サーバの稼働状況管理やトラブルシューティング時間を約30%削減、管理者当たりの仮想マシン数を65台から96台へと約30%向上。

  • 5年間でTCOを約60%削減。

明治安田生命は、プライベートクラウド基盤構築の第1フェーズとして、基幹システムの移行をすでに完了しており、第2フェーズでは、その他のシステム、明治安田生命グループ関連会社の各システムを2018年3月までの4年間で順次移行する予定だ。また、クラウド基盤にVMwareのネットワーク仮想化プラットフォーム「VMware NSX」を融合し、自動化の促進によるビジネスの俊敏性向上も検討している。

なお、神戸氏はすべての企業がここまで綿密な計画の下、プライベート・クラウドを構築する必要はないとアドバイスする。目安としては、物理サーバを1000台程度運用している規模になると、同サービスを活用して仮想化することで、メリットが得られ、物理サーバが100台程度であればここまでやる必要はないという。