北海道大学は10月23日、約50年前に部分骨格が発見され、以降わずかな体の骨しか発見されず謎の恐竜とされていた「デイノケイルス」の全身骨格を2体発見したと発表した。
同成果は同大学総合博物館の小林快次 准教授と韓国やモンゴル、カナダなどの研究機関の国際研究グループによるもので、10月22日(現地時間)付けの英科学誌「Nature」に掲載された。
デイノケイルスは1965年にモンゴル・ゴビ砂漠で初めて発見された。名前は「恐ろしい手」という意味で、腕だけで2.4mもあったことに由来している。発見以来、わずかな骨しか発見されておらず、50年近く謎の恐竜とされていた。
同研究チームは、2006年から2010年までゴビ砂漠で恐竜発掘調査を実施。2006年と2009年に、2体のデイノケイルスの骨格化石が発見された。また、同調査とは別にモンゴルから日本へ密輸され、現在はモンゴルへと返還されている標本も研究対象とし、2009年に採取した標本と比べたところ、同一個体であると判断したという。
これらの個体を調べた結果、デイノケイルスは獣脚類オルニトミモサウルス類の恐竜であることが判明、全長11m、体重6.4tという巨体であったと推測された。オルニトミモサウルス類は骨を空洞にして軽量化することで、走行性の優れた足の速い恐竜であることで有名で、体長も最大でも6mほど。一方のデイノケイルスは軽くなった体を巨大化へと利用して進化を遂げたと考えられている。
また、頭は非常に長く、背中には帆があり、腕が大きいという異様な姿をしており、足の骨の構造から、デイノケイルスはゆくっり歩く恐竜で、長い腕で植物を集め、魚を食べる雑食性の恐竜だったと推測されるという。
なお、モンゴルでは化石の盗掘・密輸が大きな問題となっており、貴重な標本が破壊され国外へ密輸されるケースが後を絶たない。日本もその市場となっており、小林准教授は「実物標本の売買は、売る方だけでなく買う方にも責任がある」とコメントしている。