日立製作所は10月21日、冷却性能に優れた両面冷却パワーモジュールを用い、さまざまな電力変換器に適用可能なモジュラー型電力変換ユニットを開発したと発表した。
従来の片面冷却パワーモジュールでは、下面のベースプレートのみから放熱するのに対し、両面冷却パワーモジュールでは両側面から放熱するため、従来とは異なる冷却システムを新たに開発する必要があった。開発したモジュラー型電力変換ユニットでは、両面冷却パワーモジュールの両放熱面に、熱伝達性に優れたヒートパイプを配置する独自の空冷システムを採用した。ヒートパイプの実装位置や空冷フィンの形状、厚さを熱解析により最適化することで、冷却効率を従来比で20%高め、さらに空冷フィンの体積を従来に比べ50%削減したという。
また、電力変換ユニットの小型化と保守を簡易にするため、ユニット自体の幅を縮小するとともに、ユニット自体をスライドさせて、電力変換器の前面から抜き差しすることが可能な薄型ユニットが必要だった。そのため、複数の両面冷却パワーモジュールとコンデンサを直線上に配置したが、その配置により、熱に弱いコンデンサがパワーモジュールからの熱の影響を受けること、またコンデンサから距離の近いパワーモジュールに電流が偏って流れやすくなることが課題だった。これに対し、今回開発したモジュラー型電力変換ユニットでは下面からの風で冷却されるが、コンデンサをユニットの底部に配置することで冷却効率を高めるとともに、電磁界解析により、配線の幅と形状を最適化することで、複数のパワーモジュールへの電流を均等にする配線実装技術を開発した。これらの技術により、幅が5cm、体積が従来よりも55%削減した小型モジュラー型電力変換ユニットが実現したという。
開発したモジュラー型電力変換ユニットは、従来器よりも小型で保守性に優れた次世代無停電電源装置(UPS)に導入される。UPSは、インバータとコンバータに加え、蓄電池からの電力を変換するチョッパ回路で構成されている。それぞれが持つ機能は、同一のモジュラー型電力変換ユニットを複数接続することで実現できる。さらに、容量アップが必要な場合は、必要な数のモジュラー型電力変換ユニットを並列接続することで対応が可能である。日立は、今後、ビル内に設置されるデータセンタや、銀行、病院などの公共性の高いシステム向けに、容量100kVA~300kVAの次世代UPSをシリーズ展開していく予定。