京都大学は10月16日、形状と細孔サイズを自在に変えることができる多孔性の3次元グラフェンナノシートとその簡便な合成方法を開発したと発表した。
同成果は、同大 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)のFranklin KIM助教、Jianli Zou研究員らによるもの。詳細は、英国オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。
多孔性グラフェンナノシートは電気特性、柔軟性や機械的強度という優れた物理的特性からさまざまな製品に使われることが期待されている。これまで、2次元多孔性グラフェンシートの作製方法として、CVDや酸化グラフェンを溶液に分散させてから塗布する方法などいくつかの方法が提案されてきた。しかし、いずれの方法も用途に応じた形状にしたり、細孔のサイズを変えたりすることが容易ではなく、また2次元であるために表面積の大きいシートをつくることが困難だった。
そこで今回、3次元多孔性グラフェンシートの簡便な作製方法を開発した。具体的には、陰イオンを有する酸化グラフェンと陽イオンを有するポリエチレンイミンというポリマーが電気的に引き合って、ポリイオンコンプレックスという複合体を形成する性質を利用した。その複合体の中で、陽イオンを有するポリエチレンイミンが陰イオンを有する酸化グラフェンに拡散しながら、多孔性の酸化グラフェン積層膜を作るという全く新しい方法を見出した。この現象を利用して、シート状や塊状などさまざまな形状の3次元多孔性グラフェンナノシートの合成に成功したという。
今回の成果により、これまで不可能だった任意の形状をもつ積層膜や細孔サイズを自由に変えることができる3次元シートを作製できるようになった。さらに、熱処理により高い電気伝導性が発現された。今後、多孔性グラフェンナノシートがもつ電気特性、柔軟性や機械的強度を活かし、リチウムイオン電池、燃料電池、キャパシタ、吸着材、センサなどへの応用により、社会に大きなインパクトを与えることが期待されるとコメントしている。