東北大学は10月15日、ナノメートル級の籠状構造(=B10H10イオン)をもつ安定な錯体水素化物において、B10H10イオンによりナトリウム超イオン伝導が促進される新たな現象を発見したと発表した。

同成果は、同大 金属材料研究所の松尾元彰講師、同大 原子分子材料科学高等研究機構の宇根本篤講師、折茂慎一教授らによるもの。同大大学院 工学研究科、アメリカ国立標準技術研究所、メリーランド大学、サンディア国立研究所、ロシア科学アカデミーと共同で行われた。詳細は、「Advanced Materials」のオンライン版に掲載された。

研究グループでは、水素エネルギーの普及の観点から高密度水素貯蔵材料の開発を進めており、その候補材料の1つとして、ナトリウム(Na)とホウ素(B)、水素(H)で構成される錯体水素化物に関する研究を行っている。その一環として、水素を放出した後に生じるナノメートル級の籠状B10H10イオンと、その周りのナトリウムイオンの動きを調べた。その結果、Na2B10H10では110℃以上でB10H10イオンの配置変化と高速回転が起こり、これらに促進されてナトリウム超イオン伝導現象が発現することを発見したという。

今回の成果は、B10H10イオンなどの籠状構造を持つ新たな固体電解質の開発指針を提案し、これを実証した点で注目されている。また今後、次世代蓄電池と言われる全固体ナトリウムイオン2次電池の開発を加速させることが期待されるとコメントしている。

錯体水素化物Na2B10H10でのナトリウム超イオン伝導現象の発現