ExaScalerは10月14日、保守性に優れた完全開放型ながらシステム全体を高効率に冷却できる液浸冷却手法を開発したほか、併せて同手法を用いて16kWまでのシステムを冷却可能なサーバラック8Uの液浸冷却システム「ESLC(ExaScaler Submersion Liquid Cooling)-8」を開発したと発表した。
HPC分野での冷却方式は従来の空冷では対応できない場合、ヒートパイプなどを用いる水冷方式が多く用いられるようになっている。しかし、冷却の必要がある電子部品がサーバなどでは多岐にわたるほか、省電力化、長寿命化にはスイッチング電源やDC-DCコンバータを含めたマザーボード全体を冷却する必要があることから、システム全体を効率的に冷却する必要があり、その実現に向け、システム全体を液体に浸ける液浸冷却に期待が集まっている。
同システムは完全な開放型を採用。水と比較して大きく粘度が異ならない不活性液体を冷媒として用いることと併せて、高い保守性を確保することに成功したという。また、冷媒から抜き出した基板は、短時間で冷媒を切ることができるため、空冷環境の場合とほぼ同等に扱うことが可能なほか、冷媒は水よりも蒸発しづらい性質のため、気化熱(潜熱)を用いる冷却装置で使用される冷媒とは異なり、蒸発による冷媒損失を懸念する必要がないという特長もあるという。
当初の構成では合計16kWまでのシステムをサーバラック8Uに実装して、冷媒をポンプで強制的に循環し、熱交換器、ならびに小型室外機により冷却することで、主要な半導体電子部品を含めたシステム全体の温度を循環冷媒から20℃以内に保つことが可能であり、これにより冷却装置を含めたシステム全体の消費電力の絶対値を抑えることが可能になることを確認したほか、PUE値を抑えたい場合でも、循環冷媒温度を外気温より高い値に設定することで冷却装置の電力消費を最小限にする設定とすることも可能であることも確認済みだという。
なお同社では、今回の8U構成品に加えて、今後、4U、16U、32U構成品も順次製品化していく予定とするほか、同方式に特化したマザーボードの開発も行っていく予定としている。また、同システムは2014年11月16日から21日まで米国ルイジアナ州ニュー・オーリンズで開催されるSC141において、共同研究先の東京大学ブースでパネル展示が行われる予定だという。