10月7日から5日間、幕張メッセで「CEATEC JAPAN 2014」が開催されている。連日、多くの来場者が訪れているオムロンの展示ブースでは、コア技術であるセンシング&コントロールに基づき、急激に変化するビジネス環境において、顧客のニーズを先取りし、新たな価値を創出するための革新的な「automate」技術が数多く紹介されている。

体温計だけじゃないオムロン

オムロンといえば、体温計や体脂肪計、歩数計などのホームヘルスケア製品や健康医療機器/サービスが思い浮かぶのではないだろうか。しかしそれ以外にも、制御機器・FAシステム、電子部品、車載電装部品、社会システム、無停電電源装置・組込みシステム、環境関連機器・ソリューションと幅広い事業を展開している。

事業展開のコンセプトは「automate(オートメート)」である。オートメートとは、「自動化」や「効率化」はもちろん、新しい"オートメーション"による価値の創造を意味する。機械にできることは機械にまかせ、人が本来持っている可能性や豊かな想像力を解放することで、人々をより幸せにすることを目指している。

たとえば私達は、部屋で過ごす際に、気分にあった照明や音楽、あるいは香りなどで、自分好みの環境を作りだすことができる。しかし、カメラ付きのセンサを利用して、時々の顔色や表情などを瞬時に判断すれば、体や心の状態に合った環境を自然にもたらすことができる。その一環となる「automate」技術が、「Human Vision Components - Consumer model(HVC-C)」である。

HVC-Cのコンポーネント(写真左)と、表情推定の検出を体験できる展示の模様(写真右)

HVC-Cは、人の状態を認識する顔画像センシング技術「OKAO Vision」とカメラモジュールを一体化させた手の平サイズのコンポーネント。顔検出、人体検出、性別推定、年齢推定、視線推定、顔向き推定、顔認証、表情推定(満足、不満足のほか、真顔、喜び、驚き、怒り、悲しみの5つの表情を推定)、手検出、目つむり推定の10種類をセンシングできる。

センシングの結果は、BluetoothやWi-Fiを介してスマートフォンやタブレット端末などに送信し、アプリケーションで操作が可能。玄関に設置して家族の帰宅を知らせたり、部屋に設置して離れた家族や子どもの見守りをしたり、リビングに設置して好みの空調、好みの明るさに設定するなど、明るく、楽しい、豊かな生活を実現できる。

HVC-Cは、まずはBluetooth対応版が2014年12月より発売される。価格は未定。Wi-Fi対応版は2015年3月の発売を予定している。オムロンでは、HVC-Cのアプリケーション開発情報や開発キットをウェブサイトなどで公開する予定。またハッカソンやアイデアソンなどの開発イベントにHVC-Cを提供することで、新たな価値の創出を支援していく。

ほかにもたくさん!「automate」技術

「高速運搬時の振動抑制技術」は、揺らさず高速にものを運ぶ「automate」技術である。脳にあたるコントローラから、手足にあたるサーボモータへの指令をコントロールすることで、揺れを抑制するオムロンの独自開発技術だ。たとえばベルトコンベアーで液体を運ぶときの振動を制御することで、液体をこぼすことなく運ぶことができる。

「高速運搬時の振動抑制技術」の展示(写真左)では、振動制御の有無でレーンを分けて紹介している。同じ速さで液体の入ったコップを動かすが、下部のコップは技術が使われていないのですぐに液体がこぼれてしまうが、上部のコップは振動制御の効果でどれだけ動かしても一滴もこぼれることはない(写真右)

最大の特長は、新たに機器を追加することなく、プログラム部品(ファンクションブロック)を制御プログラムに貼り付けるだけで振動の抑制を実現できること。もの作りの時間短縮や生産性向上、小型化・軽量化、省エネなどに貢献できる。製造ラインや介護用ベッド、高齢者用モービル、電車などへの実装が期待されている。

また「2重倒立振子のビジュアルフィードバック制御」は、状態フィードバック制御により、倒立状態を安定・維持させる「automate」技術である。高性能画像センサにより、2本の振子の微小な傾きを検出し、コントローラへ高速にフィードバック。台車を水平移動させることで、2本の振子の倒立状態を維持させる高度な制御を実現している。

「2重倒立振子のビジュアルフィードバック制御」の展示(写真左)と、装置が左右に動いて二本の振子を保たせている様子(写真右)

仮想化環境上のシミュレーションにより、動作を確認した制御アルゴリズムを、自動的にコード生成し、容易にコントローラに取り込むことが可能。2足歩行ロボットや未来のスクーターである電動立ち乗り二輪車、自動車製造ラインにおける高度な作業の自動化などへの適応が期待されている。

このほかにもオムロンの展示ブースでは、さまざまな基礎技術が紹介されているが、その集大成と言えるのが「卓球ロボット」である。卓球ロボットは2種類の画像センサで、人の位置、ラケットの位置、3次元空間における球の位置と速度を即座に計測し、球の軌道と速度を予測。相手と同様の速度で、打ち返しやすい場所に返球することができる。

卓球ロボットのアーム部分(写真左)と、デモンストレーション(写真右)では、軌道を予測して長いラリーを展開

今後も、「automate」技術をより一層発展させていくことにより、「人と機械が最適に調和した豊かな社会」の実現に取り組んでいく、オムロン独自の事業展開に注目したい。