女性の肥満は閉経の前も後も、乳がんの危険因子であることを、国立がん研究センターの笹月静(ささづき しずか)予防部長らが日本人の大規模な調査研究8つを解析して確かめた。乳がんを予防するためにも、極度の太り過ぎは避けたほうがよさそうだ。今年の欧州のがん専門誌Annals of Oncologyに発表した。
今回の研究は、日本の8つの大規模な調査研究が対象にした18万人以上の女性(調査開始時にがん既往歴なし)に関して、肥満指数BMI(体重kgを身長mの2乗で割った指数、標準は22)と乳がんの関係を探った。平均12年の追跡期間中に乳がんになった女性は1783人(閉経前301人、閉経後1482人)いた。診断時で閉経前か閉経後かに分け、BMI23以上25未満を基準値の1.0として、BMIによる乳がんリスクを比べた。乳がんの発生率に影響する喫煙や飲酒などの諸要因は補正して、影響を除いて解析した。
その結果、太ってBMIが大きくなっている女性ほど、乳がんのリスクが高くなっていた。特に、閉経前の女性では、BMI30以上でリスクは基準値の2.25倍だった。閉経後の乳がんでは、BMIが1上がるごとに5%上昇する直線的な関連性がみられた。逆に言えば、閉経後の女性は、やせているほど、乳がんのリスクが低かった。これに対して、閉経前では、やせていても、乳がんのリスクは基準値と同程度だった。
欧米の女性の乳がんと肥満の関連を比較したところ、閉経後ではほぼ同じ傾向だった。しかし、閉経前の女性について、極端な肥満が多い欧米ではBMI30以上で乳がんが減少することが報告されており、日本人の女性はそれと反する結果になった。アジア人で、乳がんとBMIの関連がはっきりしたのは今回の研究が初めてという。
笹月静部長は「乳がん予防の観点からは、やせている女性でリスクの低いことがわかった。ただ、やせて栄養不足になると、免疫力を弱めて感染症を引き起こしたり、脳出血を起こしやすくなったりするので、やせ過ぎは好ましくない。総合的な健康にも配慮して、中高年女性のBMI目標値としては、21以上25未満を推奨したい」と話している。