産業技術総合研究所(産総研)と広島大学は10月6日、天然硫化銅鉱物の一種コルーサイトと同じ結晶構造の人工鉱物「Cu26V2M6S32(M=Ge、Sn)」を合成し、400℃付近で高い熱電変換性能を示すことを発見したと発表した。

同成果は、広島大学大学院 先端物質科学研究科の末國晃一郎助教、高畠敏郎教授、産総研 エネルギー技術研究部門熱電変換グループの太田道広主任研究員らによるもの。詳細は、アメリカ物理学会誌「Applied Physics Letters」(オンライン版)に掲載された。

コルーサイトCu26V2M6S32は、Cu(銅)とS(硫黄)を主成分とし立方晶(等軸晶)系の結晶構造を持つが、天然のCu26V2M6S32はMとして毒性元素のAs(ヒ素)を含んでいる。また、Mの中に含まれるAs、Sb(アンチモン)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)の割合がさまざまであるために、熱電特性が一定ではないと考えられている。そこで今回、AsとSbを含まないM=GeとM=Snを人工的に合成して熱電特性の評価を行った。

まず、構成元素を1000℃以上の高温において直接反応させ、次に、その粉砕試料を加圧しながら高温で焼結させて高密度試料を得た。そして、物性測定を行った結果、これらの試料がp型の金属的な電気伝導性を示し、400℃(673K)において高い無次元熱電変換性能指数ZT=0.7(Ge)、0.6(Sn)を示すことを見いだした。この値は熱電変換効率に換算すると6~7%程度に相当するという。

また、コルーサイトでは、構成元素の一部を価電子数の異なる元素で置換すればホールキャリア密度を容易に調節できるので、今後、既存材料を上回る高いZTが得られることが期待できる。さらに、同物質は、低毒性で地殻中の埋蔵量が豊富なCu、Sn、Sを主成分としており、レアメタルレスの熱電変換材料といえるため、環境負荷の低い高効率熱電発電の実現に大きく寄与することが期待されるとコメントしている。

コルーサイトCu26V2M6S32(M=Ge, Sn)の結晶構造