9月30日(火)、早稲田大学早稲田キャンパス大隈小講堂にて、早稲田大学ビジネススクールによるシンポジウム「日本発、ラグジュアリーブランドの可能性」が開催された。
トークセッションのテーマは「世界と伍する、日本発ラグジュアリーブランドへの挑戦」。早稲田大学ビジネススクール教授、早稲田大学ラグジュアリーブランディング研究所・所長の長沢伸也氏と、Lexus International、資生堂グループのハイプレステージブランドである「クレ・ド・ポー ボーテ」の責任者らが日本ブランドの問題を提起した。
早稲田大学ビジネススクール教授、早稲田大学ラグジュアリーブランディング研究所・所長 長沢伸也氏 |
Lexus International レクサスブランドマネジメント部 部長 高田敦史氏 |
資生堂「クレ・ド・ポー ボーテ」ブランドマネジャー 藤井恵一氏 |
まず初めに、長沢氏より、「ラグジュアリーとは何か」をテーマとしたトークが展開された。長沢氏は、「コカ・コーラやアップルについて、マーケティング学者らは『ブランド』だと言いますが、街行く人が言うブランドとはルイ・ヴィトンやシャネル、エルメスのこと。日本ブランドがラグジュアリーブランドとして成功するためには、後者から学ばないといけない」と話す。ルイ・ヴィトンなどのラグジュアリーブランドでは、安定的な収益が維持されており、利益率も高いのだという。
長沢氏曰く、「問題なのは日本が何を作るか」。かつて日本企業の強みといえば「うまい、安い、早い」であったが、1990年代、世界の新製品のライフサイクルが劇的に短縮したことがきっかけとなり、日本は遅れをとったのだ。解決策は「短いライフサイクルに対応すること」か「ライフサイクルを延ばす工夫をすること」。「特に、日本のモノづくりの技術力やクリエイション力をいかせば、製品のライフサイクルを延ばすことは可能で、世界のラグジュアリーブランドにも迫っていけると思うんです」と長沢氏。
そして、品質に自信のある製品は高価格化、高付加価値化、高ロイヤリティ化すること、顧客を喜ばせるためには、自社の強みやこだわりをいかしたブロダクトアウトをすること、生産の基点は海外に置かず、日本を基点にすること、機能・便益志向より感性価値志向を大事にすること、ブランド力を向上させること、をすすめる。
「フランス人は『MUJI』にZEN(禅)の精神を感じ取っているそうで、割高でも人気だったりします。クールジャパンは漫画、アニメ、おたく、萌え、伝統産業で打ち出すのではなく、『MUJI』のように日本らしさに充ちた商品で打ち出していくべき」とのことだ。
シンポジウム「日本発、ラグジュアリーブランドの可能性」ポスターデザイン |
そんななか、パネリストとして登壇したLexus International レクサスブランドマネジメント部 部長の高田敦史氏に対し、長沢氏は「レクサスは値引いたりしないところが評価できる。値引きしないのはラグジュアリーブランドの鉄則」と太鼓判を押す。一方、「ヨーロッパビジネスの勉強不足で2007年に欧州から撤退した」と話した資生堂「クレ・ド・ポー ボーテ」ブランドマネジャーの藤井恵一氏は、「ブランドストーリーを作るのが難しい」と悩みを吐露していたが、「シャネルやラルフローレンが世界観を作ったように、ラグジュアリーにはブランドストーリーが必要!」と長沢氏はアドバイスしていた。
最後に、長沢氏は「良い製品であれば外貨も稼げ、高くてもファンがいて売れる。それがラグジュアリー。世界の百貨店の礎を気づいたのは日本の百貨店。日本の未来は明るいと思いますよ」とまとめ、イベントを締めくくった。