2014年9月3日、ローランド ディー.ジー.株式会社(以下:ローランドDG)は、新製品として光造形方式による3Dプリンター「ARM-10」と、切削加工機「SRM-20」を発表した。なお、この2機種は「デスクトップ上での新たなデジタルものづくりのあり方を提案する」ための新シリーズ「monoFab(モノファブ)」のラインナップとして発売されている。本記事では、同社国内営業部 国内マーケティング課 錦見尚樹氏にお話を伺い、「monoFab」によってローランドDGが目指す「Desktop Fabrication(机上でのものづくり)」の未来について解説したい。
普及する環境が整い、拡大する3次元加工機市場
ローランド ディー.ジー.株式会社 |
3Dプリンターを初めとする3次元加工機の市場は、ここ2~3年で急速に広がりつつある。その理由として錦見氏は「普及するための環境が整った」からだと語る。
「CADの普及でITのインフラが整い、データ通信が容易になり、そして何より機器そのものが安価になりました。以前と比べると、データを作成して出力するまでの環境が格段に整いやすくなり、現在のような状況を生み出したのでしょう」(錦見氏)
そして、このような環境が整った今だからこそ可能な、新たなデジタルものづくりのかたちが、同社の提案する「Desktop Fabrication(デスクトップ・ファブリケーション)」である。
ローランドDGが提唱する「Desktop Fabrication」のコンセプト |
Desktop Fabricationが未来のものづくりを変える
出版や印刷物などの世界において、今や欠かせないものとなったDTP(DeskTop Publishing:机上出版)。その普及は、出版や印刷業界に大幅な作業工程の短縮とコストの削減をもたらした。DTPが普及した理由、それはソフトウェアやフォント、LANなどによるプリンターとの通信環境、そしてPCの低価格化によって環境が整ったためだと言われている。そしてこの状況は、前述した「現在のものづくり市場における環境」と、ほぼ一致する。
机の上に置くことを前提に設計された「monoFab」シリーズは、非常にコンパクトなサイズとなっている。切削機における粉塵や、騒音などの問題に対処するためにフルカバー構造を採用。一般のオフィスのデスク上で利用することを想定した設計となっている。
机上工場を可能にするローランドDGの新ブランド「monoFab」(ローランド ディー.ジー. 東京クリエイティブセンター) |
歴史あるシリーズ名をリニューアルして挑む「未来の机上工場」
ローランドDGが3次元加工機を世に送り出したのは、1986年の切削加工機「CAMM-3 PNC-3000」 が最初である。その後、1996年にブランド名を「MODELA」と変更。これは2011年に登場したコンシューマ向けの「iModela」まで使用されており、ユーザーにとっても、馴染みの深い名称だった。だが今回、その名称をあえて「monoFab」に変更したところに、ローランドDGがDesktop Fabricationにかける、並々ならぬ想いがこめられている。
「多くの人に親しまれた名称を変更することに、社内からも異論は出ました。ですが、新しいことにチャレンジするのなら、それをはっきり示したい。そこで新たな名称のシリーズを立ち上げることになったのです」(錦見氏)
monoは「ものづくり」だけではなく、「もの語り」や「もの思い」などの言葉にあるような「夢・アイデア・イメージ」の意味を含む。そしてFabは、もの「づくり」の意味を持つ「Fabrication」の略をあててある。この2つをあわせて「イメージをカタチ」にするビジョンを表現しているのだ。
今回、新シリーズ「monoFab」としてラインナップされた2つの機種は、ローランドDGが掲げる”Desktop Fabrication”の実現に向けて大きな役割を担っている。切削加工機は削って造形をする。一方、3Dプリンターは材料を盛って造形をする(積層)。手法が異なるため、それぞれに得手不得手がある。
「切削加工機に関しては、弊社は四半世紀におよぶ歴史と実績があります。その一方で、積層方式の3Dプリンターは提供できていませんでした」(錦見氏)そのため、かつては顧客の要望に応えられないと判断し、他社の製品を紹介したこともあったそうだ。しかし「ARM-10」の登場により、切削加工機と3Dプリンターが揃うこととなった。
「デスクトップサイズで、切削(削る)と積層(盛る)の2種類の機器を揃えることは、世界でも例を見ません。双方の利点を"机上の工場"で組み合わせることができれば、より自由な発想が広がり新たなイノベーションが実現できるはずです」(錦見氏)
ローランドDGが目指す新たなものづくりの形「Desktop Fabrication」。そして、それを実現する「monoFab」シリーズ。これらは東京、名古屋、大阪、福岡にある各地クリエイティブセンター、および販売代理店にて体験することができる(詳細は下記URLを参照)。また、10月16・17日には、東京浜松町にある同社のクリエイティブセンターにて「monoFab Experience Day」を開催。
17日の基調講演には、FabLab Japanの発起人である慶應義塾大学環境情報学部准教授 田中浩也氏が登壇する予定だ。「monoFab」のみならず、今後の日本における「ものづくり」について考える、貴重なイベントとなっているので、興味のある方は参加してみてはいかがだろうか。
⇒monoFab Experience Dayの詳細はこちら