クラウディアンは2014年9月18日、同社のパートナーがオブジェクトストレージソフトウェア「Cloudian HyperStore ソフトウェア」を搭載したハードウェアアプライアンスやソリューションパッケージを提供する「Cloudian HyperStore Readyプログラム」を発表した。

Cloudian HyperStore ソフトウェアは、マルチテナント/マルチデータセンターに対応した、Amazon S3 APIに完全準拠するオブジェクトストレージ製品である。単一障害点のない完全分散型アーキテクチャを採用しているため、信頼性と拡張性にすぐれたストレージシステムが構築できる。

クラウディアン株式会社 営業ダイレクター 石田徹

同社の認定を受けたパートナーは、自社で取り扱うハードウェアやアプリケーション、サービスにCloudianを組み合わせて販売提供ができる。またユーザーは、ハードウェアの調達やアプリケーションの選択といった手間をかけることなく、低コストで拡張性・信頼性の高いオブジェクトストレージを導入できる。

そこで、クラウディアンの営業ダイレクターを務める石田徹氏に、Cloudian HyperStore ReadyプログラムとCloudian HyperStoreアプライアンスについて話を伺った。

── Cloudian HyperStore Readyプログラムの特徴について

石田氏 Cloudian HyperStore Readyプログラムは、Cloudian HyperStoreソフトウェアを搭載したアプライアンスや、アプリケーション等と組み合わせたソリューションパッケージをパートナー様と一緒に作り、お客様に販売提供するものです。米国では、当社で選定したハードウェアにCloudianを搭載したアプライアンス製品を販売開始します。

またCloudianは、簡単に利用できるソフトウェアのストレージ製品ですが、導入する際お客様からハードウェアの選定や調達について相談を受けることがよくありました。その点を踏まえ、予めクラウディアンが最適機器を選び、短期間に利用開始できるアプライアンス製品の評判は上々です。

しかし、さまざまな環境・ニーズのある日本企業では、単一のハードウェア製品は、柔軟性に欠け、適していないのではないかと考えています。

Cloudianを実際に販売するパートナー企業も、システムインテグレータやソリューションベンダーなどさまざまで、それぞれ自社で取り扱うハードウェアは異なります。一方で、Cloudianソフトウェアは搭載するハードウェアの機種を選びません。汎用的なIAサーバであれば、過不足なく稼働します。

だとすれば、各社が使い慣れたハードウェア製品にCloudianを搭載してユーザーに提供したほうが、ノウハウやサポートの面でメリットが高いのです。もちろん、Cloudianの稼働を検証したうえでアプライアンスとして認定するため、ユーザーも安心して導入・活用していただけます。

なお本プログラムはまず日本から提供開始し、後日米国もこれに追随する予定です。

── ハードウェアメーカー向けのプログラムではないのですね

石田氏 Cloudianは、どのようなハードウェアの機種にも搭載することができますが、それ自体は“ストレージインフラ”であり、単体ではあまり意味を成しません。アプリケーションやサーバと上手く連携し、どのような使い方をするかが非常に重要です。

そのため私たちは、ハードウェアメーカーに限らず、アプリケーションベンダーやストレージベンダーなど、さまざまな企業とパートナーシップを結び、Cloudianをさまざまな用途にて活用していただきたいと考えています。

Cloudian HyperStore Readyプログラムのイメージ ~Cloud Storage for Everyone~

例えば、科学情報システムズの「ビッグデータ分析ソリューション」では、大規模データを蓄積するデータストアとしてCloudianを採用しています。ビッグデータは、さまざまな用途に用いられることが期待されるため、オープンインタフェースのCloudianが適していると判断されています。

また、ファイルフォース(旧:ウェイズジャパン)の「Fileforce」は、プライベートクラウドでオンラインストレージを構築する際に、Cloudianを活用することができます。

【科学情報システムズのCloudianの採用例】
ビッグデータをリアルタイムに“回す”3つの“仕掛け”とは
【ファイルフォースのCloudianの採用例】
利便性に特化したクラウドストレージサービスをプライベート環境へ

9月18日の発表時点では、ACCESS、NECネッツエスアイ、科学情報システムズ、コアマイクロシステムズ、ジグソー、トゥモロー・ネット、日立システムズ、ファイルフォース、FOBASコンサルティングが、Cloudian HyperStore Readyプログラムへの参加を計画されています。

その他にも、これまでストレージを扱っていなかったシステムインテグレータであれば、Cloudianと汎用サーバを組み合わせることで、アプリケーションからストレージまで一元的に提供できるようになり、新しいビジネスチャンスを掴むことが可能です。

ユーザーにとってみても、あるハードウェアメーカーに信頼を置いていたり、運用のツールやノウハウを持っていたりする場合、そのサーバに合わせて製品を選ぶことができるというメリットがあります。もちろん、Cloudian HyperStoreソフトウェアを購入すれば可能ですが、アプライアンスとして提供されることによって、検証や導入の手間を大幅に軽減することが可能となります。

私たちは、今後もCloudianのパートナーを強化して、エコシステムを拡大していきたいと考えています。

── Cloudian HyperStore アプライアンスについて

石田氏 Cloudianは、最小構成であれば2基のサーバ、数TB程度から対応しており、中小規模環境でもオブジェクトストレージをスモールスタートすることが可能なソフトウェア製品です。サーバマシンを追加するだけで、オンラインのまま容易に容量を拡張することができます。

インストールも非常に容易な作りになっていますが、実際の導入にはハードウェアの選定や調達などに、それなりの知識とノウハウが必要です。特に企業ユーザーにとって、オブジェクトストレージという新しい技術は魅力的に映りますが、慣れていないものは導入しにくいものです。

動作検証済みのアプライアンスであれば、そうしたハードルを大きく下げることが可能です。あたかも従来のNASのように、簡単に購入して使いはじめることができます。

長期的な計画で考えた時、Cloudianアプライアンスのメリットは、安価にスモールスタートしたのちに容量の増設が必要となったときでも、ソフトウェアライセンスを購入すれば、任意の汎用サーバで拡張していくことができる点です。アプライアンスのメニューやサイズにロックインされず、大掛かりな移行作業も必要ありません。データはそのまま、スムーズに拡張していくことが可能です。

最近では、SDS(Software Defined Storage)と呼ばれ、従来のようなハードウェア装置ではなく、ソフトウェアでストレージを構築する動きが加速していると理解しています。ソフトウェアとして提供することで、様々なハードウェア製品やソリューションと幅広く提携することも可能になります。これにより、これまで到達できなかったお客様にも、Cloudianをお届けできる機会が広がると考えています。

── 新しいCloudian HyperStore ソフトウェア 5.0について

石田氏 当社では、Cloudianアプライアンスに最適化されたソフトウェアを開発し、新たにバージョン5.0として提供を開始しました。特に、エンドユーザーやIT管理者など、さまざまなプレイヤーの使い勝手を向上する工夫が随所になされています。

例えば、従来からCloudianは簡単なコマンドでインストールできましたが、アプライアンス向けにOS(CentOS6.5)も含めてインストールできるよう、ISOイメージのインストーラーからインストールできるようになりました。USBメモリやDVDを接続してインストーラーを実行するだけでごく短時間で作業が完了し、ハードウェアアプライアンスに組み込む作業を大幅に軽減することが可能です。

また、管理コンソールも大幅に改善されており、システム管理者にとっては、監視・レポート機能も強化されており、管理作業を効率化することが可能です。ストレージ技術に明るくないエンドユーザーであっても、容易にオブジェクトストレージを活用できるようになりました。

さらに、オブジェクトストレージとしての機能も大幅に向上しています。データ保全性を向上させるため、データをより細かに分散配置できるようになり、ハードウェア負荷の偏りが軽減されています。

その他にも、ハードディスクを一つひとつマウントできるようになったため、ノード内でRAIDを組む必要がなくなりました。そのため、RAIDカードが不要になり、ハードウェアコストを低減できるようになっています。これは、アプライアンス製品を安価に設定できるという意味でもあります。

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オブジェクトストレージと言えば、サービスプロバイダーや大企業向けの技術と見られがちですが、Cloudianは小規模な環境でも容易に導入・活用することが可能です。

さらに、Cloudian HyperStore Readyプログラムによって、これまでオブジェクトストレージのような新しい技術、製品導入に二の足を踏んでいた企業ユーザーも、ある日気が付いたら、実は使い慣れたアプリケーションのストレージとして使っていた、というように気軽に活用されていることでしょう。