東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)は9月18日、最近発見された、鉄が検出されなかった星は、宇宙の最初期にできた星が一生を終えたときの超新星爆発で放出した元素から生まれたと発表した。

同成果はカブリIPMUの石垣美歩 研究員らの研究グループによるもので、9月10日付(現地時間)の「Astrophysical Journal Letters」に掲載された。

宇宙で最初にできた星は初代星とよばれ、その質量を知ることは、その次の世代の星形成・銀河形成メカニズムを明らかにするうえで重要な課題とされている。しかし初代星の多くは寿命が短く、現在までほとんど生き残っていないため、その質量については、いまだにはっきりしたことは分かっていない。

したがって、初代星の質量を計算するためには、初代星の超新星爆発によって生み出されたと考えられる古い星の元素組成を調査する。古い星は太陽に比べて鉄などの重い元素の水素に対する割合が10分の1以下という特徴があり、銀河が始まって間もない重い元素が少ないころに生まれたと考えられている。

これまでに知られていたなかで最も鉄の割合が低い星は太陽の数十万分の1以下というものだったが、最近になって鉄の割合が大きく見積もっても太陽の1000万分の1以下しかない星が発見された。

鉄の割合が極端に低いことがわかった星の画像 (C)CAI/Paris – provided by CDS image server, Aladin: Bonnarel F.,et al. Astron. Astrophys., Suppl. Ser., 143, 33-40 (2000)

同研究グループは、この星の鉄とカルシウムの割合がこれまで見つかったどの星よりも低い一方、炭素の割合が鉄に比べて非常に高い特異な組成に着目。太陽の25倍および40倍の質量の初代星の超新星爆発で放出される元素組成を理論計算によって求め、見つかった星の観測結果と比較したところ、観測された星の元素組成は、合成された鉄やカルシウムの大部分が星の中心部が及ぼす重力によって落ち込み、ブラックホールになるとしたモデルによって、ほぼ再現できることがわかったという。

鉄が見つからなかった古い星の元素組成と、理論計算で求めた元素組成との比較。理論計算は観測された炭素、マグネシウム、鉄の元素組成をよく再現している。

初代星の超新星爆発のイメージ図 (C)Kavli IPMU

以前の理論計算からは、初代星が太陽の数百倍もの巨大質量を持つ可能性も示唆されていたが、今回の結果は、宇宙の初代星はそのようなモンスター星ばかりでなく、今日の銀河でも見られる星と同じような質量の星が含まれていたことを示すものとなる。

同研究グループは、「将来世界の大型望遠鏡で取得される観測データを、同研究のような理論計算と比較することによって、いまだに明らかにされていない初代星の性質についてのより深い理解につながることが期待される」とコメントしている。