国立天文台天文データセンターは、宇宙空間において生命に必須なアミノ酸である「グリシン」の前段階物質と考えられる「メチルアミン」を複数の星形成領域において検出することに成功したと発表した。

この成果は同センターの大石雅寿センター長を中心とする研究グループによるもので、9月12日の日本天文学会で詳細が発表される。

これまで「生命素材物質」(アミノ酸、糖、核酸塩基)やそれらの前段階物質などの有機分子を宇宙から初期惑星環境に持ち込むことが生命の発生にとって重要ではないかといわれており、1970年代の終わりから、最も簡単なアミノ酸である「グリシン」を星間分子雲で見つけようという複数の試みが行われていた。しかし、いずれも失敗に終わっていたため、同研究グループは、グリシンの前段階物質である「メチルアミン」やさらに前段階である「メチレンイミン」に着目していた。

今回同研究チームは国立天文台野辺山観測所の45m大型電波望遠鏡によって、すでに「メチレンイミン」を豊富に見出していた2つの天体において「メチルアミン」を検出することに成功した。「メチルアルミン」はこれまで銀河の中心などでも発見されていたが、今回検出された量は従来の10倍以上の量となり、「グリシン」が生成されている可能性が高いという。

同研究グループは「この研究結果に基づいて日米欧の国際協力の下に建設・運用されているアルマ望遠鏡を用いた観測を実施することにより、過去40年近く成功できなかった星間分子雲のアミノ酸を世界で初めて発見できる可能性が高まった」とコメントしている。

宇宙の「生命素材物質」から、タンパク質やDNA、単細胞生物、多細胞生物を経てヒトまでが繋がっていることをイメージした図 (C)国立天文台