富士通研究所は9月9日、電子部品や情報機器の画像を活用した自動組立時に部品位置をカメラで高精度に検出する画像認識プログラムを自動生成する技術を開発したと発表した。

生産ラインにおけるカメラを用いた自動組み立て装置や自動検査装置による作業は、専門家がカメラ画像の処理プログラムを開発することで成されているが、それだとラインの構築に必要な時間が長期間となったり、稼働中の対象や周辺状況の変化に迅速に対応できない、といった課題があった。一方で、そうしたプログラムの自動生成の実現に期待が集まっていたが、機械学習の1つである遺伝的アルゴリズムを用いることが多く、同アルゴリズムでは機械学習に必要な時間が親の集団の数に依存するため長くかかり、さらに、画像内の部品の位置検出を正確に行えるプログラムの自動生成ができないといった課題があった。

そこで研究グループは今回、機械学習の素材となる「教師」、「採点」、「教材」それぞれに工夫を施すことで、こうした課題の解決を果たしたという。具体的には、教師としては、目的の画像を得るプログラムとして用いられる画像処理関数の木構造の組合せの数を処理手順に制限を与えることで削減し、短時間化を実現した。また、プログラムの評価手法として、これまでの画質評価ではなく、位置検出を目的とする部品の形状と、その類似性を評価する技術を開発することで、多少画質が悪くても位置検出に適したプログラムを自動生成することを可能としたほか、学習候補の複数の画像を、明るさ、コントラスト、きめ細かさなどの特徴量を用いて分類し、各分類から代表的な画像を選択することで、少ない学習データで画像の変化に対応できるプログラムを生成することを可能としたとする。

これらの技術を組み合わせ評価を行ったところ、従来は50%未満どまりだった認識率が97%以上と向上することが確認されたほか、画像認識プログラムの修正時間も従来比で1/10に短縮できることを確認したとする。また、高い認識率を実現したことで、部品組立時の位置決めバラつきを半減でき、組立作業時間を2/3に短縮するといった副次効果も得られたという。

なお富士通研究所では、今回開発した技術は、部品組立の位置認識に限らず、部品加工や検査など画像認識を用いるさまざまな製造ラインへの導入が可能としており、今後、さらなる高性能化を進め、2014年度中に自社の製造ラインで実用化を目指すとするほか、同技術を活用したソリューションとして、車載カメラや監視カメラ、医療用カメラへの展開も図っていく方針と説明している。

自動生成されるプログラムの木構造の制限方法

生成された画像の評価方法

学習データの選択方法